中国発の超格安超境ECプラットフォームである「Temu」と「SHEIN」。
昨年は、世界各国で注目…あるいは標的の的となり、小売、物流、航空、そして政界と、さまざまな“業界”を席巻しました。
今回は、TemuとSHEINを取り巻く世界各国の2025年の動向を考察します。
東南アジアの状況
Googleなどの調査では、東南アジアのEC流通総額は2030年に3,700億ドルに達し、年率15%以上の成長が見込まれています。TemuとSHEINにとって、東南アジアは今年も最大の成長市場となりえる機会がありそうですが、実は2024年の後半から、中国発の格安商品が自国の産業に大きな影響を与えるとして、各国で利用中止するなど規制が盛んになりつつあります。
例えば、ベトナム政府は2024年12月にTemuとSHEINに対して事業停止を命じました。理由として、合法的な事業者登録が完了していないことを指摘していますが、実際には自国産業保護の意図があると言われています。
インドネシアにおいても、政府がアプリ配信プラットフォームでTemuをブロックする方針を取り、タイでは資格誤分溝の解決や証明書の要求を増加するなど、財務改革も進行されています。これらの方策は一環として自国の中小企業(特に製造業)を保護するためと公表されています。
米国・欧州での状況
米国において、TemuやSHEINは、強制労働や知的資産権侵害に関する問題が議論され、政策の要倡や訴訟が盛んになっています。これにより少なからずの裁量問題が生じています。
例えば、昨年から米国議会ではSHEINの商品が強制労働を通じて製造されている可能性や、商品の安全性と品質に関する検査基準、知的財産権についても声が高まっています。また、Temuに対しても、消費者保護の観点から商品の安全性や品質についての検査基準を強化する動きが見られます。
欧州では、環境規制や税制面での透明性確保が重要な課題となっています。特にフランスやドイツでは、TemuやSHEINが低価格戦略を取る一方で、環境負荷の高い製品を大量に供給しているとして批判が高まっています。その結果、両プラットフォームに対して厳しい環境ラベルやリサイクル対応基準が求められています。
さらに、EU全体では、プラットフォームの税務透明性を確保するための規制が導入され、TemuやSHEINが適切にVAT(付加価値税)を徴収しているかを監視する動きも強まっています。これにより、既存の欧州内EC事業者との競争環境を公正に保つ狙いがあります。
中南米の状況
メキシコ政府は2025年1月1日より、新たな関税制度を施行しました。これにより、国際的な協定を結んでいない国、特に中国からの製品に対して19%の関税が課されるため、SHEINやTemuは影響を受けるとされています。さらに、米国やカナダなどのUSMCA協定加盟国からの製品に対しても、価格帯に応じて17%から19%の関税が適用されます。これらの措置は、アジアからの輸入品に対する監視を強化し、地元企業の競争力を維持することを目的としているようです。
TemuとSHEINの戦略的対応
これらの規制や批判に対し、TemuとSHEINはそれぞれ独自の方法で対応を試みているようで、Temuでは各国のローカルニーズに対応するため、現地のサプライチェーンや物流拠点を強化しています。特に、環境規制が厳しい地域では、持続可能な素材を使用した商品の開発を加速させるとともに、リサイクルプログラムの導入を表明。また、現地法人を設立し、規制に対応した税務運営を行うことで各国政府との関係を改善しようとしています。
一方、SHEINは商品の品質向上と透明性の確保を強調しています。例えば、サプライチェーンの追跡可能性を向上させるために、新たなブロックチェーン技術を導入したりです。強制労働に関する批判に応えるため、第三者による監査を強化し、その結果を公開する取り組みを進めています。加えて、消費者に向けた「環境にやさしいコレクション」の展開を進め、ブランドイメージの向上を図っています。
おわりに
昨年末、ジェイグラブではインドからインターンを招いており、インドでのTemu、SHEINの利用状況を聞いてみました。
インドでは、TemuとSHEINは利用禁止アプリとされていて、サイトを見るどころかアプリをダウンロードすることもできないとのこと。インターンとして日本にいる間に…と、早速アプリをダウンロードして束の間のオンラインショッピングを楽しんだようです。
どの国も自国の産業保護のため、TemuとSHEINが利用禁止になっている流れですが、日本は毎度のことながら禁止組の後発になりそうです。トランプの大統領就任後、まずは米国で禁止となり次にEU、最後に日本という順番ではないかと推測しています。
一方、TemuとSHEINは、各国の規制や批判に直面しながらも、適応力の高さを武器に市場での競争力を維持しています。しかし、これらの課題に対する対応が不十分であれば、将来的な成長が阻まれる可能性も否定できません。特に、東南アジアや欧州の規制強化は、両プラットフォームが事業展開を見直す大きなきっかけとなるでしょう。
これらの動きは他の越境EC事業者にとっても重要な教訓となります。グローバル市場での成功には、各地域の規制や文化に適応しながら、持続可能性や透明性を重視した運営が求められる時代に突入しています。
2025年のTemuとSHEINの動向は、越境EC全体の未来を占う重要な指標となりそうです。引き続き、各国の規制や市場動向に注目していくことが必要です。
参考文献:
・東南ア、中国格安EC警戒 国内保護へ規制相次ぐ Temu・シーイン、ベトナム事業停止(日経新聞)
・Les nouvelles mesures tarifaires au Mexique risquent d’impacter des acteurs comme Shein et Temu(EmarketerZ)