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越境ECブログ

急成長中のベトナム越境EC市場とVAT課税動向と影響

越境EC市場が成長を続けるベトナムですが、アジア市場にとって重要な市場となっています。
ジェイグラブでは、以前からこのブログで定期的にベトナムのEC市場、課税などについてお伝えしてきましたが、新たな情報が出てきましたので、ベトナムのVATの基本情報とともに最近の動向をお伝えします。

ベトナムにおけるEC市場の成長

ベトナムではEC市場は2024年上半期のオンライン売上でみると約55%の増加と急速に拡大しています。Shopee、Lazada、Tiki、Sendo、TikTok Shopの5大プラットフォームの総売上合計で143,900億ドン(約797億円)に達しています。また、ベトナム人の消費者オンライン支出は、1日あたり800億ドン(約4.4億円)となり、オンラインショッピングの需要はますます高まっています。

ベトナムにおける新たな?VAT制度の概要

現在、ベトナムでのVATは10%で、多くの商品とサービスに適用されています。

そして今回新たに、オンラインプラットフォームを介したEC取引についても、VATの厳格な適用を求める流れになってきました。特に「deemed supplier(仮想納税者)」という制度により、オンラインマーケットプレイスが販売者に代わりVATを徴収・納税することが義務付けられる可能性が出てきました。これにより、ベトナム国内で消費される商品には適正な課税が行われるようになり、税収確保が強化される仕組みです。

しかしこれに対し、ベトナム電子商取引協会(VECOM)は、ECモールやプラットフォームにこの責任を課すことは、さらなる管理負担とリスクを生じさせるとして、この提案は不合理であるとして反対しています。なぜならば、ECプラットフォームを利用する個人の販売者が、商品やサービスを利用した際のVATやその他の税に関する「納税義務を報告する責任を負う」からです。

たとえば、ShopeeやLazadaなどの主要なECモールでは、欧米主要ECモールと同様に、この規則に従いVATを徴収して、消費者に転嫁する仕組みが整えられています。したがって、販売者は税務手続きが簡略化される一方、10%のVAT分が商品価格に上乗せされるため、価格競争力に影響が出ることも考えられます。

未だ検討中のもう一つの課税制度

ベトナム政府は、100万ドン(約6,000円)の低額委託救済措置の制限を2021年頃から検討していますが、未だ検討中です。これは、ベトナムから輸入された消費者向け荷物のVATを免除するものですが、同政府は海外からの電子商取引の爆発的な増加や、オンラインショッピング利用者が本来の価値を100万ドン以下に抑えるために注文を「分割」してVATをうまく免れるのではないかと懸念しており、そうなれば付加価値税収入の損失だけでなく、国内のオンライン販売業者と既存の小売業者に不公平な税負担を強いることになるだろうと認識しています。

おわりに

ベトナム政府は、免税の “悪用” を防ぐため、月ごとの免税限度を設定する可能性も示唆しているようですが、越境EC事業者は、将来的に税務コストが上昇するリスクを踏まえた価格設定や運営など戦略の見直しが必要になるかもしれません。

さらに、これは課税に関するものではありませんが、ベトナム政府はまた、オンライン市場のより厳格な規制の必要性を反映して、電子商取引プラットフォーム上の偽造品に対処するための法的枠組みも検討しているようです。

EU市場で越境EC販売をされていて売上がありVATや納税の準備ができている事業者は問題ないのですが、ほとんどの事業者はまだそこまで到達していません。気がついたら法律違反をしていた、などにならないよう今後も引き続き、ベトナムの課税制度、法整備、基準・認証などの動向を注視しながらクライアントの皆様には伴走サポートにて情報提供を継続してまいります。

参考文献:E-commerce platforms may have to collect VAT on behalf of their sellers(VAT Calc)

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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