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こんにちは。ジェイグラブの横川です。
日本でも一部で報道されたようですが、実は弊社ブログでは、今年の3月の段階で、こうなる可能性があることを伝えていました(参照:米国の関税の非課税基準値撤廃措置をバイデン大統領に超党派で上院議員が訴え)。
当時は、あくまで可能性に過ぎなかった話が、実現に近づいているとロイターやウォール・ストリート・ジャーナルなどが報道しておりますので、紹介します。
それ以外にも弊社のブログでは、EUやブラジルなどでの動きも報じてきましたし、距離的に中国に近い、韓国や東南アジアの事情も伝えてきました。この中国系ECのなりふり構わぬ動きに対する各国政府の動きは、諸外国のECにも影響を与え始めており、このまま行くと、越境ECの魅力がなくなってしまうかもしれません。
米国、800ドルの「デ・ミニマス*」免除で低額中国出荷を抑制する措置を講じる
※ジェイグラブ註:デミニマスとは「◯◯ドル以上の申告物には関税が発生する/〇〇ドル未満の個人宛の荷物には関税が発生しない」というような、関税の発生基準値のことです。現在アメリカでは800ドル未満のBtoCは免税になっています。
バイデン政権は、SheinやTemuといった中国のeコマース企業によって悪用されてきた、800ドルの「デミニマス」基準で無税で米国に入る低額貨物の増加傾向に歯止めをかけるために動いていると述べた。
ホワイトハウス当局者によると、中国製品に対する301条関税、鉄鋼・アルミニウム製品に対する232条関税、太陽電池製品や洗濯機を含む製品に対する「セーフガード」関税に関する201条関税の対象となる低額商品を含むパッケージに対する免税を拒否する新しい貿易規則を提案するという。
また、この規則案には、米国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection)の捜査官が、違法薬物の原料となる前駆体化学物質など、違法または安全でない製品の内容物をよりよく識別できるようにするための、小型パッケージに対する新たな情報開示要件も含んでいる。
ホワイトハウスの発表は、議会の民主党議員らがジョー・バイデン大統領に対し、中国からの輸入品が関税を逃れ、税関検査なしで米国に麻薬を出荷することを可能にしてきた「抜け穴」と化したデ・ミニマム規定を撤廃するために行政権を行使するよう求めた2日後に行われた。
小包免税は、個人旅行者に対応するために1930年以来米国の通商法の一部であったが、eBayのような電子商取引プラットフォームの販売者を含む中小企業への援助として、2015年に基準額が200ドルから800ドルに引き上げられた。限度額以下の荷物は、個人宅宛であれば無税で通関するため、税関の監視も緩やかである。
それ以来、800ドルの基準額以下で米国に入る荷物の量は、10年前の約1億4000万個から昨年は10億個以上に爆発的に増加したとホワイトハウス当局者は述べ、その成長のほとんどは中国のeコマース企業によるものだとした。
最大の受益者は、中国から米国の消費者に直接出荷しているSheinとTemuである。その逆に被害をうけている米国の繊維メーカーは、中国の大規模な繊維・アパレル輸入の約70%をカバーする米国301条関税を回避するために、低価値の衣料品パッケージを許可する関税免除措置に対し非難している。
ホワイトハウスのダリープ・シン国家安全保障副顧問は記者団に対し、「デ・ミニマム出荷の激増により、この経路で米国に持ち込まれる違法または安全でない出荷に的を絞って阻止することがますます難しくなっている。そのため、政府はデ・ミニマムの乱用と濫用を抑制するための規制プロセスを開始する」と述べた。
新ルールの目的は、デ・ミニマム貨物の量をより管理しやすいレベルまで減らし、より良い荷物のスクリーニングを行うことだと、政府高官は語った。別の規則案では、疑わしい貨物の特定をより容易にするため、デ・ミニマムパッケージに製品関税コードやその他の情報の記載を義務付ける。
この規則案がどの程度早く実施されるかは不明である。最終決定までには、関係者が意見を述べるためのパブリックコメント期間が必要となる。政府高官はまた、特定の輸入に敏感な製品を包括的に除外する貿易条項の改革を可決するため、議員たちと協力していると述べた。
この措置は、バイデン政権が約180億ドル相当の中国からの輸入品に対し、電気自動車に100%、半導体と太陽電池に50%、リチウムイオン電池、鉄鋼、アルミニウムに25%の関税を課すなど、米国の関税引き上げを決定したのと同じ日に発表された。
参考:US to take steps to curb low-value Chinese shipments under $800 ‘de minimis’ exemption
Biden Takes Aim at China’s Temu and Shein With Trade Crackdown
おわりに
記事にもあるように、アメリカへ送るBtoCの荷物の場合、申告額が800ドル未満であれば、関税が発生せずに通関します。しかし、中国から大量にいろいろな荷物が送られることで、自国産業の成長の阻害につながったり、違法物の流入などが目立ち始めると、対抗策を打たざるを得ません。
考えられる対策としては、中国から発送される輸入品の関税率を引き上げるか、関税の発生基準値そのものを引き下げるかのどちらかになります。
中国からの輸入物の関税率を上げるほうが、私達日本人にとっては助かるんですが、このやり方だと、中国人だったら、在庫を近隣のラオスやカンボジアなどに移し、そこから発送することでルールの穴をつくことなどが容易に考えられるので、確実な効果を上げるには、あらゆる荷物の関税の発生基準を下げるか撤廃するほうが良いとなるでしょう。
そうなると、どんな安価なものでも関税を気にしないとならなくなるため、我々日本企業もこのとばっちりを受けるかもしれず、越境ECの魅力が削がれる方向に進むのかもしれないと心配しております。