PHOTO by T. Schneider
こんにちは。ジェイグラブの横川です。
資生堂と言えば、日本で知らない人はいません。越境ECという言葉が流行りだした当時、資生堂は中国市場に力を入れており、毎年11月に行われる独身の日では、資生堂がいくら売り上げたかというのがよく一つの指標にもなり、記事にされていました。
しかし、習近平政権の意向を受け、過度な商売性を出す演出は控えられるようになり、福島の処理水問題で日中間の国際問題になったことも影響し、昨年の独身の日では、資生堂はおろか、日本企業の製品はどれもランキングに入らないという現象が起きました。中国経済の停滞も理由にはありますが、越境ECは国際問題も直に影響してきますので、しっかり国際ニュースも見ておく必要があります(特に国家体制が著しく異なる中国などはなおさらです)。
実はニュースをしっかり追っていれば、資生堂は、中国市場からは昨年よりももっと前から少しずつ距離を取り始めていました。そして、数年の時期を経て、今度は北米市場に力を入れるようです。
資生堂はアメリカ大陸でのECを強化している
資生堂の米国子会社は、eコマースを強化している。eコマース部門を新設したばかりの資生堂アメリカズコーポレーションは、ジャネット・ガーナー氏を資生堂とNARSのグローバルeコマース担当副社長に任命した。資生堂とNARSのブランドを含むeコマース部門の副社長として、ジャネット・ガーナー氏は、2つの日本の化粧品ブランドのオンライン活動、マーケティング、マーチャンダイジング、および運営を展開する。
ジャネット・ガーナー氏は、資生堂アメリカズコーポレーションの財務・業務担当執行副社長兼地域最高財務責任者のパンカジ・グプタ氏の直属となるが、以前はランコム ・ロレアルUSAで電子商取引およびインタラクティブマーケティング担当副社長を務めていた。また、ヴィクトリアズ・シークレットでもマーチャンダイジングおよびインターネットカタログのビューティーディレクターを務めた経歴を持つ。
3月31日終了の昨年度、この日本のグループは6823億9000万円(66億5000万ユーロ)の収益を上げ、1.7%の増加となった。また、高級化粧品分野への新規参入者との競争により、資生堂の国内市場での売上はほぼ1%に落ち込んだが、それでも日本は売上の半分(55.7%)を占めている。アメリカ大陸は売上の12.7%を占め、グループの世界売上の13.1%を占めるヨーロッパに次いでいる。
参考:Shiseido is strengthening its e-commerce in the Americas
さいごに
以前にも書きましたが、インターネット黎明期には「ネットはドッグイヤー」だとよく言われました。ドッグイヤーとは、同じ1年間でも犬はヒトの7年分早く老けていくというもので、インターネットもそれだけスピードが早い世界だという教訓です。
中国人の爆買いは、もはや9年前です。物理的には2015年頃の話ですが、ネット的には63年前の出来事に等しいというくらいスピードが早いのです。なので、未だに中国人の爆買いを話題にする人がいたら、私には「朝鮮特需が期待できる」と本気で言っている人を目の前にしているかのような感じになり、目眩がするのです。
経済や商売はいかに情報を早くキャッチするかです。海外で通信社が発達したのは、いち早く世界の情報を知りたいという純粋な知的好奇心からではなく、いち早く情報をキャッチし、株で大儲けしたい投資家が育てたのです。情報力が雌雄を決します。
こうした、世間の動きを見ると、数年前から中国とは距離を取り、その間に欧米圏に積極的に関与しようという動きを見せていた資生堂は、さすが大手といいますか、完全にトレンドに乗っています。資生堂をベンチマークに越境ECを検討している企業の話をよく聞きますが、それであるなら、この動きにならいましょう。