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こんにちは。ジェイグラブの横川です。
この1~2年の間に、一気に安売りのECモールとして世界中を席巻している中華系の2つの巨人である、Shein(シーイン)とTemu(テム、英語圏ではティーム―に近い)ですが、価格で太刀打ちできない国の事業者にしわ寄せが来たため、対抗策が打たれそうです。
ヨーロッパの繊維産業は、SheinやTemuに利益をもたらす関税免除の撤廃を加速させることを求める
20万近くあるヨーロッパの繊維およびアパレル企業を代表するユーラテックス(ヨーロッパ繊維衣料連合)にとって、EUの150ユーロ未満の荷物は関税が課税されないルールが、eコマース企業によって悪用され、ヨーロッパの製造業者にとって不公平な競争を引き起こしています。ユーラテックスはこの免税の即時撤廃を求めており、現在EU本部が提案している2028年まで待つのではなく、すぐに実施することを主張しています。
「関税は、EUの単一市場内での公正な競争を確保し、製品が私たちの環境および安全基準に適合することを保証する上で重要な役割を果たしています。しかし、特にeコマースの成長と規制の複雑さの増加を考慮して、21世紀に適した改革システムの必要性を認識しています。」と、ユーラテックスのマネージングディレクターは説明している。
2023年には、150ユーロ未満の荷物が20億個ヨーロッパに入ってきました。ファッション・ネットワーク誌によると、この問題は1月30日にブリュッセルで開催されたヨーロッパeコマース連合(Ecommerce Europe)が主催するシンポジウムの中心にあり、販売プラットフォーム、ヨーロッパの税関当局、およびEU議会議員が、150ユーロの税制閾値(しきいち)の撤廃案について議論していました。
「関税の閾値は、EU全域レベルで戦略的な議論になっています。新しいビジネスモデル(Shein、Temuなど)の爆発的な成長により、ヨーロッパ内の既存のプレーヤーやアリババ、アリエクスプレス、Wishのような対抗勢力から市場シェアを急速に奪っていることが認識されているからです。これは、広範な懸念があります。特に大きな問題は、この競争に対抗するためにどのように規制を行うかです。」と、ヨーロッパeコマース連合の法務ディレクターは語っている。
ヨーロッパで130万人を雇用し、640億ユーロの輸出を生み出す業界を代表するユーラテックスは、最近新しい会長としてマリオ・ジョルジェ・マチャドを任命しました。このポルトガルの繊維業界の代表者は、数日前にファッション・ネットワーク誌に今回のことが優先事項であると共有しました。
おわりに
これら中国由来のECモールは、EUのルールを破っているわけではなく、公正な市場原理の中で動いているのですが、超低価格で販売しているため、結果的にEUの関税ルールの盲点を突いたような形となり、現地産業の保護ができていないということにまでなってしまいました。
これにより、現地産業保護のためにEUができることは、輸入品の関税率を引き上げるか、関税の発生基準値を引き下げることになります。今回は関税の発生基準値を下げる、または撤廃という方向で議論が進んでいるようです(つまり、これまでは、ある一定の価格以内なら関税は無税だったところを、どんな低価格でも関税を発生させるという意味です)。
この動きは、遅かれ早かれ決定事項として進んでいるようなので、我々日本企業もこのとばっちりを受けるようになっていきます。
また、このSheinやTemuに対するAmazonの対抗策について、このところ日経などが記事にし始めましたが、海外ではそれより2週間近くも早くから報道がありました(下記)。
参照:Amazonの新規企画スタート後は価格で勝負できないと難しい