こんにちは。ジェイグラブの横川です。
アメリカではこの時期は、11月からクリスマスでのホリデーシーズンのツケとして、大量の返品に悩まされる「クリスマスの二日酔い」と呼ばれる季節に突入します。
国際クーリエのUPSは、返品が一番多かった日を「ナショナル・リターン・デー」と呼んでいます。
海外では、日本の常識が通用しません。日本では返品するときは、注文したものと違う、受け取ったときには破損していた、注文を間違えたなど、返品する側にも正当な理由があることがほとんどです。
しかし、海外ではそんなもの全く関係ないです。
新品の服のタグを付けたままお出かけして、用が済んだらサイズが違ったとか難癖つけて返品したり、相手が本当に欲しがっているかどうかを考えず、当てずっぽうにプレゼントとして購入し、渡してみて、相手の反応が良くなかったら、返品可能な期間のうちに返品するなど、日本ではおよそ考えられない返品が大量に起こります(なので、お客様は神様だとばかりに対応していると、相手に付け込まれるので、場合によってはロジカルにディベートする必要もあるのです)。
さて、今回は、越境ECでよくある不正返品の種類と、その対策をまとめた記事を紹介します。
Eコマースにおける返品不正利用の把握と防止
PYMNTSと共同で、大規模なeコマース事業者の意思決定者100人を対象に調査を実施しました。その結果、大半の企業(89%)が少なくともいくつかあるポリシーのうちの1つのポリシーの乱用に悩まされていると回答し、そのうち66%の小売業者が返品の乱用が増加していると報告しています。結論から言うと、米国の小売業者は毎年、ポリシーの乱用によって売上の2.2%を失っていることになります。
しかし、2.2%と甘く考えないでください。この一見小さな2.2%が、小売業者にとって年間890億ドルものコストになっているのです。
過去数年間、eコマースが成長するにつれ、小売業者のポリシーの乱用も増えています。返品に関する不正使用は、詐欺師と既知の顧客の両方によって行われるため、企業にとって特に大きな問題となります。返品の不正使用を防ぐには、まず、この種の不正行為のさまざまな特徴を理解する必要があります。ここでは、企業が注意すべき一般的な手口について説明します。
意図的でない返品の不正使用
返品を悪用する詐欺師の手口を知る前に、すべての不適格な返品が悪意あるものではないことも知っておくことが重要です。
返品対象外の商品を誤って返品してしまうケースもあります。このようなミスは、通常、返品に関するポリシーが不明確であることが原因です。分かりやすい返品ポリシーがなければ、不適格な商品が意図せず返品されてしまうのです。ですから、返品の不正使用を防止するための最初のステップは、お客様が簡単にアクセスできる明確で簡潔な返品規定を持つことです。
悪質な返品の悪用の種類
意図的な返品の乱用はどうでしょうか。 ここでは、最も一般的なシナリオをいくつか紹介します。以下の手口はすべて、ビジネスの収益に等しく悪影響を及ぼすものであり、悪用は様々な方向から行われる可能性があることに留意してください。
値札交換
値札交換とは、高価な商品の値札を安価な商品に付け、高価なものに見せかけた安価な物をレシートなしで返品することです。この場合、客は差額を多めに受け取ることになります。
防ぐには 簡単に剥がせない値札(シールや交換可能なパーツがないもの)を使用することで、値札のすり替えを防ぐことができます。画面に表示された商品とスキャンされた商品が一致していることを再確認するよう、スタッフに教育することも重要です。
万引きした品物を返す
万引きしたものを返品するのは、かなりわかりやすい手口です。犯人は、何も支払わなかった商品の返金を受けることを期待して、商品を盗むのです。
防止策としては、返品にはレシートを求めることを必須とすることです。
レシート詐欺
「値札のすり替え」と「万引き品の返品」の対策が生み出す新たな不正手口です。
万引きした商品にはレシートがないという問題があるため、犯人は不正なレシートを使おうとします。偽の値札をつけるのと同じで、捏造や盗難、あるいは古いレシートをつかう可能性もあります。
どうすれば防げるか。レシートに記載されているSKUは、レシート詐欺の防止に役立ちます。SKUが商品と一致しない場合は、返品を許可してはいけません。SKUがない場合は、従業員にレシートの偽造や無効の兆候であると教育することもできます。
ショップリスト
犯人はレシートを「不正返金獲得リスト」として集めます。レシートに記載されている商品を(不正に)入手することで、レシートに記載されている品を返品し、返金を試みることができます。
どうしたら防げるか。返品規定に期限を設けることで、詐欺師が古いレシートを使って新しい商品を返品するのを防ぐことができます。
ウォードロービング
アパレルをよく買う顧客がよく使う手法で、顧客が商品を購入し、数回使用した後に返品することです。
例えば、あるイベントやパーティーのために洋服を購入する人がいるとします。そのイベント以外には使用しないので、タグなどを見えないようにして使用し、使用済みにもかかわらず返品してしまうのです。ウォードロービングは、商品に大きな破損は起きていないことが多いですが、詐欺であることに変わりはありません。
防ぐには、返却された商品をよく見て、使用した形跡がないかを確認することです。また、衣類の場合は、タグが隠しづらい目につきやすい場所にタグをつけ、不正利用を防ぎます。
返品の不正利用におけるさらなる注意点
返品の悪用に関しては、小売業者やその他の事業者が注意すべき手口が数多くあります。しかし、さまざまな種類の不審な行為が行われる可能性があるため、そう簡単ではありません。当社の調査を参照すると、回答者の53%が「大規模な対応ができないこと」を重要な課題として挙げており、32%が「繰り返し悪用する人をブロックできないこと」を大きな課題として挙げています。
また、37%の企業が不正利用による損害の大きさを自動的に追跡できないことを挙げています。つまり、ポリシーを調整しても、その戦略が有効かどうかがわからない可能性があるのです。
そのため、最も重要な最初のステップは、直面している不正行為の規模と形式をよりよく理解することです。そのためには通常、特定の購買者についてリアルタイムでポリシーの調整ができるシステムを提供できる企業と提携する必要がでてくる可能性もあります。ポリシーの乱用が拡大し進化し続ける中、上記の戦略は御社のビジネスを保護し、顧客を守るために重要です。
参考:Understanding and Preventing Returns Abuse in E-commerce
おわりに
返品は嫌なものですが、しかし、だからといって逃げ回り続けることもありません。ちゃんとした返品はチャンスでもあるのです。
実際、返品プロセスがストレスフリーだと、6割以上の消費者がリピートする可能性を示唆し、また、再コンタクトした場合、最初に購入したものより高いものを選ぶ率が高いというデータがあります。しっかり対応すれば、顧客のファン化・リピーター化が期待でき、結果的に中長期視点で見ると、プラスに作用します。
また、面白い返品対応のひとつに、慈善団体に寄付した証明を見せれば、返金するというやり方を始めた企業もアメリカにはあり、非常に好評だそうです。