こんにちは。ジェイグラブの横川です。
「日本の物価は高いので、富裕層に売りたい」
こういう声をよく聞きます(実際は日本の物価はもう高くないですが)。
ただ、確かに東南アジアでは、日本の商品はまだまだ高いです。そこに送料もかかるので余計に高くなってしまいます。
東南アジアでは、シンガポールを除くと、その多くの国の平均月収は米ドル換算で300~500ドルをコアにその前後にある国がほとんどです。つまり、月収3万円から6万円あたりの人が多い地域で、1万円の物(数千円の物であっても送料を加えると1万円近くになり、給料の1/3程度になってしまいます)を定期的に買わせようとするのは、もはや押し売りです。
これを自分に引き入れて考えてみましょう。例えば、新卒の若い人で20万円前後の給料をもらっている人に、8万円の物を恒常的に買わせようというのが土台無理だということくらい誰でも分かるでしょう。ご自身が若かった頃に、給料の3分の1もする品を毎月買うだけの資金が、家賃や光熱費、食費を除いたあとに捻出できましたか?
つまり、富裕層と口にしている時点で発想が安直であり、何も考えていないということが丸わかりなんです。もちろん取扱商品に愛着はあるでしょうし、プライドもあるでしょう。しかし、そのブランドが果たしてエルメスやヴィトン、グッチ、SK-II(P&G)、資生堂と張れるものなのか、冷静に見つめ直しましょう。
最後に富裕層に売るチャンスがあるかもしれないヒントも書いて終わります。
高級品Eコマース 2024~高級ブランドが低迷期を乗り切る方法
高級ブランドは、個人向け高級品の二大市場である米国と中国での需要の減速に2024年は苦戦した。この厳しい状況の中、高級ブランドと小売業者は創造性を育み、顧客がどこにいても彼らとつながることに一層力を入れなければならないだろう。
個人向け高級品の世界売上高は、米国と中国の成長鈍化の影響により、2024年はわずか3.2%だけの増加で4,291億5,000万ドルに達する見込みです。
さいごに
富裕層に売りたいと言う発想になってしまうのは、インバウンドが影響していると思います。インバウンドで日本に旅行に来れる人は、東南アジアの場合は、確かに中流層以上が多いのは事実です。しかし、そうした人口はピラミッドの上位の少数層で、全世界がその層に売りたいと目指しますから、競争率は高くなります。
また、忘れてはいけないのは、相手の発想や考え方です。これを知っておく必要があります。
そもそも、金持ちと貧乏人は住んでる世界が違いすぎるので、なかなかお互いがお互いの気持を想像しにくいものです。私も金持ちの考えていることがよくわからない一人です。
先日、インバウンドの金持ちが殺到する某百貨店の担当と話をする機会がありました。その人によれば、そうした富裕層は、毎月とか、2ヶ月に1回とか、非常に頻繁に来日しているそうです。
「海外から日本に来るなんてのは、年に1回くらいのご褒美だろうから、日本に来れない間はネットで売ろう」という目論見自体が、もう破綻しています。彼らはしょっちゅう来てるんです。目も肥えてますし、金も持ってますから。
さらに、百貨店の花形部署といえば、富裕層を相手にする外商部ですが、そんな富裕層相手に慣れている人たちでさえも、海外の富裕層の接客は勝手が違って大変なんだそうです。そんな百戦錬磨と思える人たちでも大変だと言うターゲットを、中小企業の担当者が相手にできるとは(これまでサポートしてきた限りでは残念ですが)思えません。
ここまで考えると、海外の富裕層に本気で売りたいのであれば、国内の百貨店のバイヤーの厳しい審美眼をも唸らせる商品を作ったほうが早いというのが結論です。
百貨店のバイヤーさんたちは厳しいですよ(笑)。でも、正直こちらのほうが早道に思えます。
ECでやるにせよ、百貨店路線で行くにせよ、結局は(しつこく言っていますが)意識を変えて熱量を上げる覚悟がないとダメだということに変わりはありません。