こんにちは。ジェイグラブの横川です。
英語に「カレン(Karen)」という単語があります。もちろん一般的には女性の名前なのですが、その他に「他人の迷惑を顧みない、わがままな白人女性」のことを指すスラングとしても使われます。
※モデルになった女性はいるのですが、その人はエイミーで、なぜカレンになったのかはわかりません。
そこから転じて、現在では白人女性に限定されず、理不尽な不満をぶつけてくるクレーマー全般に使われています。日本ではモンスター・クレーマーといいますね。まさにそれです。
※しかし、男女平等が叫ばれる中で、この用法は許されるんでしょうかね?
ちなみに不満を言うこと、苦情をいうことを「クレーム」といいますが、これは和製英語です。「クレーム(Claim)」は「主張する・要求する」という意味しか英語にはありません。日本のようにはっきり意見を言わない社会で主張するときは、大抵が不満を述べるときなので、不満・苦情≒主張=クレームになっちゃったのかもしれません。英語でクレームは「コンプレイン(Complain)」です。
さて、今回はECにおける「カレンさん」から見える改善点についてまとめた記事がありましたので、抜粋して紹介します。
「カレン」は、輸送業者のカスタマーサービスにスポットライトを当てる
今までに、誰もが「カレン(モンスター・クレーマー)」と関わっているかもしれません。男でも女でも、基本的に態度が悪く、「責任者を出せ」とすぐに言う人は誰でもカレンになりえます。
カレンは、カフェラテがただぬるいだけとか、他店が50%オフで売っているのに御社の価格がなぜ定価なのかなど、さまざまなことで発生しますが、オンラインショッピングの配送の失敗ほど、本格的なカレン・エピソードを挙げたら枚挙にいとまがありません。
世界的なロジスティクス・プロバイダーのファー・アイ社が行った調査によると、優れた配送体験は消費者を満足させ、その満足度を維持するために不可欠であり、消費者のロイヤリティを左右する可能性があることがわかりました。配送の遅延(※)やコミュニケーション不足は、悪い配送体験に最も寄与しており、36.8%の消費者が悪い体験によりオンラインショップに対する評価を変えています。約4割(38.9%)の消費者が、悪い配送体験の後、小売業者に2度目のチャンスを与える可能性は低いと回答しています。
※UPSの調査によると、最近はスピード配送より確実な入手に重きを置くユーザーが増えているという結果も出ています。
パンデミックは、購入習慣と配送への期待を変化させました。ファーアイによると、パンデミックの期間中、25%の顧客が注文から配達までのあいだ、リアルタイムの追跡情報や最新の注文場所通知を利用できることを期待し、リアルタイムコミュニケーションへの期待を高めていました。
2020年以降、多くの人がオンラインでの購入に切り替え、運送業者の追跡番号を見つめる以外にすることはありませんでした。パンデミック規制が解除されると、消費者の30%が買い物を直接行うつもりという回答も増えました。しかし、そんななかでも消費者の32%は、オンラインでの買い物が増えたと回答し、オンラインショッピング利用者の65%は、店舗での受け取りよりも宅配を好むと回答しています。これは、オンラインショッピングと宅配へのシフトが持続していることの表われです。
ファー・アイ社のCMOは「Eコマースの拡大に伴い、顧客は購入体験に優れた自宅配送を求めるようになっています。小売業者が配送を自社のサービスの重要な差別化要因として捉え、満足度の高いロイヤルカスタマーの獲得につなげる必要性があることが強調された」と述べている。
このため、運送業者のサービスはますますオンラインショップの顧客サービスの延長線上にあるものとなっています。そのため、箱に傷があったとしても運送業者の問題で片付く事もあれば、そもそもの梱包が悪いということでオンラインショップの問題になる可能性も高まっています。
現在の貨物輸送環境では、オンタイムデリバリー(とにかく安定した定時配送)がますます重要になっています。そのため、競合他社の欠点を指摘し、新しい契約ビジネスを獲得しようとする運送業者が後を絶ちません。
輸送は人間関係のビジネスであり、従来の顧客は、時折の配送の失敗には寛容でしたが、その許容範囲が、ECが表舞台に出てきてから縮小しています。もはや売り手と運送業者は一心同体です。
カレンは、時間通りに、そして傷やへこみのない輸送を望んでいます。もしこの2つの条件が満たされないと、売り手が永遠に顧客を失う可能性は40%で、運送業者もその顧客としての荷主を失う可能性が高いのです。
参考:‘Karens’ shine spotlight on a fleet’s customer service
おわりに
日本人は契約書や取扱説明書をよく読まないと言われます。相手に対し敬意を持って接し、信用することで成り立つ社会だという証左であり、それはとても誇れるのですが、これは日本社会のみの話です。海外ではしっかり読んでおかないと、あとから文句を言っても相手にされません。
クレームは洋の東西を問わず発生します。個人的な経験では、日本人のクレームが一番ウェットで手に負えないと思っています。
「説明文に書いてあるのに読んでいないことで起きるクレーム」を例にしましょう。
越境ECなら「読まなかったあなたが悪い」の一言で割と早く収まるという経験があります。それ以上争ったところで自分が負けるのがわかるからです。訴訟社会の海外ならなおさらです。一方、日本人は読まなかった自分を棚に上げてネチネチ文句を言い続けます。
この世界一神経質で面倒くさい日本人クレーマーを相手にしてきた過去があれば、なんとかなると思っています。
しかし、もう一つ注意があります。
日本の商習慣では、相手が理不尽なことを言っていても、まず相手をなだめるために自分の意志とは裏腹に「申し訳ございません」から入りますが、これはやめたほうがいいです。そんな下手(したて)に出なくて大丈夫です。堂々と自分の正当性を主張してください。
日本では売り手は買い手に対し下手(したて)に出る習慣がありますが、海外ではかえって相手を緊張させるときがあります。なぜなら海外ではあくまで両者は対等だからです(日本でも法律上は対等です)。
「金を払ってやるからモノをよこせ」「モノを渡す代わりにちゃんと金払え」
両者の関係はそれ以上でもそれ以下でもありません。純粋にこれだけの関係です。お客様は神でもなんでもありません。ちなみに、この「お客様は神様です」は三波春夫さんが言った言葉として有名ですが、あくまでショーマンとしての彼が言っただけの言葉で、これが日本社会のありとあらゆるところへ独り歩きしている状況をご遺族の方は心を痛めているようです。三波春夫さんの公式サイトにわざわざご遺族の方がそんなコメントを掲載しています。
そう考えると、日本人相手よりストレスも小さいですし、越境ECのほうが楽ですよ。