ジェイグラブの横川です。
昨年から猛威を奮っている新型コロナの影響でEC化を急いだ事業者様は多かったことと思います。さらに先行きの暗い日本市場を考え、越境ECを検討し始めた方も増えた年でもありました。
国内を含む世界中の専門家やエコノミスト、学者が、新型コロナが終息しても、ECは高止まりこそすれ、コロナ前には戻らないと異口同音に言っています。
昨年の夏までに越境ECをやると決めた方は、昨年末が初めての年末商戦(ホリデーシーズン)だったわけですが、アジアも欧米も年末に買い物に狂う季節が来るということは、年明けにアレがやってくるわけです。
そう、大返品の嵐が。
これを、国際クーリエ(国際民間物流業者)のUPSは「ナショナル・リターン・デー」と名付けました。
米国のNBC系列のTV局、WRALは「クリスマス後の二日酔い」と表現しました。だれでも返品を受けることと二日酔いはしたくないですからね。
今回は、ウィズコロナ初のリターン・シーズンの状況と、リターン・シーズンはネガティブな話ではないという締めを後半に書きたいと思います。紹介する記事は日本企業向けに一部編集しています。
クリスマス後の二日酔い:EC店舗は返品のために11億ドルのコストを準備している
新型コロナ大流行中のオンラインショッピングは、小売業者にとっては救世主となっていますが、それには代償が伴います。
何百ものEC店舗のオンライン返品を管理するソフトウェアとテクノロジーの会社である Narvar Inc. によると、買い物客は昨年のホリデー期間に比べて 2 倍の商品を返品すると予想され、企業は総計で約 11 億ドルのコストを負担することになります。
昨年3月以降、オンラインでの購入が非常に多くなっており、UPSやFedExなどの運送会社はホリデーショッピングシーズン前にはすでにフル稼働状態になっていました。そして、オンラインでの売上は急上昇を続けています。アドビ・アナリティクスによると、11月1日からの売上高は、前年同期比32%増の1716億ドルに急増しました。今後COVID-19ワクチンを出荷するという大規模な課題が、システムをさらに圧迫する可能性があります。そのため、多くの企業は、顧客が返品を受け付ける場所を増やしており、送料を削減し、買い物客への返金をより迅速に行うとしています。
カリフォルニア州サンタモニカを拠点に、Rothy’s や Revolve など約 150 のオンライン小売業者と提携している新興企業 Happy Returns は、ドロップオフ(引き取り)の拠点数を昨年の 700 か所から 2,600 か所に増やしました。その中にはフェデックスの拠点が20,000カ所も含まれています(※国内でも一部地域でZARAが行っているドロップオフはよくできていると評判ですね)。
また、以下のような返品対応も斬新でユーザーを喜ばせた。
マサチューセッツ州に住むユーザーはアパレルサイトで40ドルで服を買ったが、サイズが合わず、返品したいと申し出た時、サイト側は、「商品を保管するか、廃棄するか、または友人や慈善団体にそれを寄付するよう」にアドバイスし、追加の10ドルで適切なサイズを発送し直しました。この対応に購入者は「私はそれで良かった。友人のために良いことをしたし、新しいシャツも手に入れた。この経験は、このホリデーシーズンにオンラインで失敗した場合の不安を軽減させてくれた」と答えた。
一方、AlixPartnersによると、買い物客は返品に対する罪悪感を感じにくくなってきているという。
「自分のサイズがわからない場合、迷った全てのサイズを注文します。どの色かわからない場合は、迷ったすべての色を注文します。そして、どの商品かわからない場合は、迷ったすべての商品を注文します。しかし、これでは小売業者にとっては返品は織り込み済みとなってしまい、コストがかかりますし、すべてのコストを処理できる立場にはありません。」
店舗で購入した商品の返品率は8%なのに対し、オンラインで購入での返品率の平均は25%もあるとのことです。衣類の場合はさらに高く、約30%にもなります。
返品物流会社のオプトロによると、ファッションアパレルの価値は8~16週間で20~50%下落すると推定されています。そのため、不合格となった商品は迅速に再販売することが非常に重要になります。
今年は返品については例年以上に複雑な状況になっています。なぜなら、小売業者は出荷の遅れを避けるために、ホリデーギフトを早めに購入するよう呼びかけていたからです。アマゾンでは、10月1日から12月31日の間に発送された商品については、1月31日まで返品が可能となっており、顧客に判断する時間を与えています。昨年は10月に出荷された商品は対象外でした(これは、ギフトを渡した相手の反応がいまいちだった場合に備えて、返品有効期間中に相手にギフトを渡し、相手の反応がいまいちだったら即座に返品するというやり方を可能にさせている)。
参考:Ecommerce Christmas hangover: Retaliers brace for $1.1B in returns
いかがだったでしょうか。
「ギフトを渡した相手の反応がいまいちだった場合に備えて、返品有効期間中に相手にギフトを渡し、相手の反応がいまいちだったら即座に返品する」
日本ではあまり聞いたことありませんが、海外ではこんなのは日常茶飯事です。相手が日本人購入者のように振る舞ってくれると思い込むのは危険です。日本市場では性善説で活動してもほぼ何も起きませんが、海外相手の場合は嫌でも性悪説的に行動しないとなりません。それゆえにセミナーで「知識を仕入れても意識を変えなければ成功しない」と言い続けているのです。
また、毎年恒例の「プレゼントもらったけどマジで要らないから開封もせずに転売しちゃう祭り」も報道されています(笑)。
People are selling their unwanted Christmas gifts on eBay – and some are still wrapped up
一方で、「返品するなら、要らないだろうけどあげちゃうから保管するなり捨てるなり好きにして頂戴。それか友達か慈善団体に寄付するのはどうかな?で、追加で10ドル(送料とちょっとした手間賃でしょうね)払ってくれればちゃんとしたもの送ります」というやり方は欧米では受けそうなスマートなやり方ですね。
通常の販売でも1円たりとも損は出さない、返品も確実にきっちり受け取る、という日本のやり方は神経質過ぎてストレスを感じさせるような気がします。それよりは少々損しても次回以降に取り返せばいいくらいの思い切りが必要な気がします。一つのことに長々と時間をかけるほうが、それこそ時間とコストの無駄です。
しかし、返品したいと言っている人に追加金額を請求して、しかも払わせることなどできるのかという疑問があるかもしれません。
ところが可能なんです。
海外では「返品のオペレーションがスムースでストレスがなかったり、返品システムが簡単であれば、実は購入者の96%が『もう一度訪れよう』と回答し、さらに購入者の57%は、返品の際に返金を求めるのではなく、当初買ったものと同じ商品の交換を望むか、当初買ったものよりランクの高い物を買い求める傾向がある」というデータがきっちりあるのです。
ただひたすら謝るだけの日本のやり方とは違いますね。海外向けのスマートな対応を身に着けて、今年は越境ECで飛ばしましょう!