こんにちは。 ジェイグラブの横川です。
11月11日の、独身の日(シングルズ・デー、ダブル・イレブン)といえば、中国が発祥で、毎年話題になってきましたが、近年は勢いを失いつつあります(下記、関連記事参照)。
日本人は、留学、転勤、国際結婚などでやむを得ず海外生活をしないとならなくなった人や、日本に呆れかえった、日本が肌に合わないなど、地域によっては変わり者とレッテルを貼られてしまいがちな人くらいしか海外におらず、多くの日本人が日本列島にいるので、感覚的に「〇〇人は■■(国名)にいるもの」という先入観を持っている人が非常に多いです。
しかし、果たして「中国人は中国大陸にいるもの」なのでしょうか?
答えの一つとしては間違っていませんが、完璧な答えではありません。なぜなら中国系で中国以外に拠点をもつ人は世界にたくさんいるからです。
従来の国際感覚は非常に視野が狭く、これを変えないと、越境ECの戦略策定を誤ることは必至です。
したがって、独身の日も中国だけで完結している話ではないのです。同じ時期に東南アジアでも盛り上がっています。
中国での輝きが失われ、東南アジアが新たな「独身の日」の戦場となる
バンコクのにぎやかな通りでは、TikTokショップの「独身の日」キャンペーンが大型LEDスクリーンで絶え間なくプロモーションを流しており、その存在感を示していました。他にも、多くのプロモーションが生活に浸透しています。配車アプリ「Grab」ではTikTokショップの「ダブル11」ロゴが地図インターフェースに目立つ形で表示され、アリババグループ傘下の「Lazada」のプロモーション攻勢はタイでトップトレンドの話題となりました。一方、SNSプラットフォーム「X(旧Twitter)」は魅力的な割引を宣伝する広告であふれていました。
世界最大のオンラインショッピング祭である「独身の日」(ダブル11としても知られる)は、15年前にアリババの「淘宝(タオバオ)」が中国で開始しましたが、現在中国ではその魅力が薄れつつあります。一方で、急成長する東南アジア市場で新たな勢いを得ています。
消費者の購買行動
28歳のバンコク在住者、ナッタポン・クームアンさんは最近、シンガポールに本社を置く「Sea Group」が運営するオンラインマーケットプレイス「Shopee」で3600バーツ相当のスキンケア製品を購入しました。割引により20%の節約ができ、商品は通常どおり時間通りに届きました。遅延が発生すれば、追加のクーポンがもらえる仕組みです。
「ダブル11の割引は他のキャンペーンよりも良いです」とクームアンさんは話します。「高額な商品でも購入を決めやすくなります」。彼はTikTokショップでも時折買い物をしますが、その場合は面白いコンテンツに触発されることが多いそうです。
東南アジアの急成長する市場
若い人口とインターネットアクセスの拡大により、東南アジアは世界で最も成長が速いeコマース市場の1つとなっています。Google、テマセク、ベイン・アンド・カンパニーのレポートによると、同地域の2022年の流通取引総額(GMV)は1390億米ドルに達しました。この市場はShopeeを筆頭に、TikTokショップやLazadaなど、国際的なeコマース企業にとって重要な戦場となっています。
中国企業PDDホールディングスの「Temu」も昨年から競争に参加しており、地元のプラットフォームと並んで競争を繰り広げています。
独身の日の影響
各プラットフォームは具体的なGMV数値を公表していませんが、セールの盛り上がりは明らかです。例えば、マレーシアではTikTokショップの4時間にわたる「11.11メガライブショー」に500万人以上が参加し、8万件のライブストリーム注文が発生しました。また、Shopeeライブでは、マレーシアの売り手が11月11日の最初の2時間で250万件以上の商品を販売し、通常の売上の6倍を記録しました。
Lazadaは11月13日のWeChat投稿で今年の「独身の日」を「販売者にとって最大のビジネスチャンス」と表現し、特定のブランドやカテゴリが11月に大幅に成長したと強調しました。同プラットフォームは、一定の支出金額を超えると割引が適用される仕組みや、無料配送を導入して購買を促しました。
ロジスティクスへの影響
物流プロバイダーもこの盛り上がりを感じています。東南アジア最大の配送会社J&T Expressは、11月1日から11日までの間に1日あたり1500万件以上の荷物を取り扱い、前年同期比73%増となりました。同社は需要に対応するため、数か月前から運営を拡張。タイでは約1万9000平方メートルの仕分けエリアを拡大し、自動化システムを13台以上追加。さらに900台以上の輸送車両を導入し、3800人以上のスタッフを新規雇用しました。
中国市場の現状
一方、中国では経済の減速が影響し、「独身の日」への熱意が冷めつつあります。消費支出の鈍化は価格にデフレ圧力をかけています。eコマースプラットフォームは2年前からイベントの売上数値の公表をほぼ停止。今年、アリババのTmallは、従来はテイラー・スウィフトやスカーレット・ヨハンソンなど国際的なスターが出演していた盛大なガライベントに多額を費やすことを控えました。
中国政府は7月以降、eコマースセクターにおける「インボリューション」(過剰競争の中での縮小)に対し繰り返し警告を発しています。
海外進出の課題
中国企業は国内市場の飽和により、広大なサプライチェーンを活用して他市場で競争力を発揮しつつ、海外進出を推進しています。しかし、各市場で異なる文化や規制、地元の保護主義に直面しています。
例えば、PDDのTemuやファストファッションのSheinは、ベトナムで未登録プラットフォームに対する警告を受け、インドネシアでは地元の中小企業を保護するためにTemuが禁止されました。
J&Tの副社長チャールズ・ホウ氏は、タイでのインタビューで「各市場では法律や規制を遵守し、地元文化や習慣を尊重する必要があります」と述べています。同社は、クロスボーダーeコマースプラットフォームを重要なパートナーとしつつ、プラットフォーム以外のビジネスへの多角化も進めています。
おわりに
冒頭で、多くの日本人の国際感覚が古いと指摘したのですが、記事中でも海外の常識と日本の常識の違いが浮き彫りになっています。
記事をまとめると、「独身の日は中国では沈んでいるが、代わりに東南アジアへ続々進出している」という内容です。
私は、10月29日の中小機構のピッチ大会で「日本企業の多くの人が「仕事のデキる人」像の洗脳を受けている」と指摘し、それがうまく行かない元だと話しました。
ジェトロや中小機構の名刺も持って支援する立場にもある私が、中小機構のオンラインを通して「ジェトロや中小機構に相談すると、「まず、どの国で展開したいか検討しましょう」と言われるようですが、正直言って「ナンセンス」だ」と話し、中小機構の司会者が「ハァ~?何言ってんだコイツ」といいたげに表情を曇らせた瞬間を見逃しませんでした(笑)。
そもそも、綿密なマーケティング・リサーチと戦略策定というのは、経済誌や経済番組で成功した人の取材などで語られることが多いのですが、ほとんどが大手のビジネスマンたちが、時間と人と予算をふんだんに使って行なっていることです。そしてそれをテレビや雑誌で見続けることで、そうすることが「仕事のデキる人」だと洗脳されている人がほとんどです。メディアが作った「仕事のデキる人」は、時間と人と予算があるからできることであり、どれか一つでも欠けたら無理です。
つまり、ネットは繋がった瞬間から安価に世界中が相手にできるのに、わざわざ特定の国に絞るということが、可能性をむざむざと狭めており、ナンセンスもいいところです。進出国を絞ってから始めるのなら、実地出店と何ら変わりません。ネットの特性を無視せずやってもらいたいものです。この記事の海外企業のように、「ここがダメならあそこがある」とすぐに路線変更できるのは地球規模で展開していたからです。
国内ECで、北海道から沖縄まで従来の商圏を無視できる環境にあるのに、「ウチは京都府民だけにターゲットを絞って販売しています」とかやっている会社ありますか?(あるかもしれないけど、それはかなり特異なケースですよね)
越境ECは地球規模で考え、その中から特定の国からの売上が高いと見たら、絞りこむのではなく、そこに重点をおきつつも、引き続き世界規模でやるべきです。