こんにちは。ジェイグラブの横川です。
本格的な年末商戦の時期になりましたが、今年はなんと言っても「コロナ禍」。オンラインもオフラインも「コロナ禍」。当然、戦略も例年とは異なって当たり前です。
しかし、「コロナ禍」。人類は何度か世界規模で拡大した感染症と戦ってはきましたが、インターネットと共存した感染症はこの新型コロナがほぼ初でしょう。つまり前例が見当たらないので、基本何をやるのも手探りですし、勇気のいることになります。
そんな中、アメリカの経済誌フォーブスが、2020年のホリデーシーズンEコマースの予測を記事にしていましたので、これを紹介致します。原文は英文特有の書き方になっていますので、極力日本語話者である私達にとって読みやすいようにすこしアレンジ・抜粋をしました。
今年は新型コロナの影響でECは世界的に業績を伸ばしました。ホリデーシーズンもEコマースの売上は爆発的に増加すると見込まれ、小売業者のオンライン戦略が試されることになります。デロイトとフォレスターは2020年末の予測をしています。
デロイトは、1%から1.5%の間でホリデーシーズンの小売売上高の上昇を予想しています。一方、市場調査会社のフォレスターは、小売売上高は通期で2.5%減少するとしています。
両社の予測は異なっていますが、どちらの会社も、今年はオンラインショッピングが爆発的に普及する年になるだろうということだけは断言しています。
ギフトとして購入されることの多いカテゴリーの小売業者のオンライン販売は、今シーズンはヘルス&ビューティーが23%増、家電製品が20%増、ファッションが19%増、家具が16%増と、年末までに増加すると予想されます。
その一方で、これらのカテゴリーの実店舗小売の業績は、ヘルス&ビューティーは8.2%減、家具は15.2%減、家電製品は26.3%減、ファッションはは33.7%減と低迷しています。
「オンラインでの購買行動が依然として強いため、2020年にはオフラインでの売上高は6.6%減少すると予測しています。」とフォレスターはレポートしています。
より強気なデロイトは、11月から1月にかけてECのホリデーシーズン小売売上高が25%から35%の間で成長し、合計で1820億ドルから1960億ドルに達すると予測しています。
ステイアット・ホーム・ホリデー
同時にこのコロナ禍には(海外では珍しく)消費者の貯蓄率が劇的に上昇しました。これはつまり、消費者がパンデミック中に旅行や休暇、外食を控え、年末のホリデーシーズンに向けて我慢したことを示している、とデロイト副会長は言います。ずっと我慢してきた反動でホリデーシーズンを楽しむために、屋内外、クリスマスツリーの装飾に費やそうと消費者は考えています。
「外出がなかったのだから、お金はどこかに使われないとならない。その行き着く先が「家」だと考えます。そして、自宅で過ごす時間が増加した分、オンラインショッピングが活況を呈すでしょう。過去4年間、ECの成長率は平均13~17%で、昨年は14.7%増でした。しかし今年は25%前後も爆発的に伸びるだろうし、もっと伸びるかもしれない」と。
この爆発的なECの予測にさらに弾みをつけたのが、以下のDynataによる新しい調査です。調査対象となった1,000人の成人の消費者の約3分の2(62%)が、ホリデーシーズンの買い物をすべてオンラインで行う予定であることがわかったのです。
また、GfK Consumer Pulseによる別の最近の調査でも、オンラインでの買い物のみを計画している消費者が42%でした。小売業者は店舗での客の誘導を大幅に減らし、ウェブサイトへのトラフィックを大幅に増やそうと試みることができる年となります。
小売業のサプライチェーンへの圧力の高まり
逆に、予想外の数の注文を処理するために、バックヤード業務は店舗からフルフィルメントセンターにシフトさせる必要も出てくるため、小売業者には多大なプレッシャーになります。
フォレスターは、「オンライン販売が歴史的なレベルで成長するにつれ、ECの物流コストが小売業者に圧迫するため、2020年は小売業者は利益獲得に対して大きなプレッシャーを感じるようになるだろう今後5年間、オンラインでの購買トレンドが堅調に推移する中、小売業者は、このマージンへのプレッシャーを軽減するためのバランスを考えなければならないでしょう。」と報告しています。
レッドポイント社のチーフ・マーケティング・戦略オフィサーであるジョン・ナッシュは、このようなプレッシャーの原因として、在庫切れ商品の発生や出荷の遅延の可能性についてスムースな運用ができていないという部分を挙げ、次のように報告しています。これはオンラインで買い物をする人が最も不満に思うことの一つであり、今年のホリデーシーズンには多くの人が不満を感じることになるでしょう。
デロイト社副会長は、「実際のサプライチェーンの現場では、大量の注文を処理して配送することができないかもしれません」と述べています。小売業者は、オンラインで購入し、店頭で受け取る(BOPIS)など、ラスト1マイルに向けてより多くの努力をしてきましたが、今年は小売のサプライチェーンにとってある種のストレステストになるかもしれません。
顧客は顧客一人一人の個性を理解している「店とのつながり(エンゲージメント)」を求める。
小売業者が軽減すべきもう一つのプレッシャーポイントは、効果のないオンラインマーケティングにかける費用です。ほとんどの小売業者は、安価な買い物を主にする顧客を優良顧客に転換するためにかかる実際のコストを計算すると、唖然とすることでしょう。
レッドポイント社のナッシュは、「小売業者は、個別化されたオムニチャネル体験を求める顧客の期待に応えていません。しかし、小売業者がすぐに入手可能な消費者データを利用すれば、この問題は解決することができる」と述べています。
消費者が最も不満を感じているのは、最近購入したばかりの商品に対してオファーを送ってくる小売業者(34%)、無関係なオファーを送ってくる業者(33%)、既存の顧客として認識してくれていない業者(31%)などを指します。
「小売業者にとって重要なのは、顧客に適切なメッセージとオファーを提供することです」とナッシュは言います。
顧客のメール受信箱が無差別・無思慮なメールで溢れかえらないように顧客体験を顧客一人一人に合わせると効果を発揮します。半数近くの消費者(49%)が、ホリデーシーズンには、パーソナライズされたコンテンツやオファーを送ってくれる小売業者から購入する可能性が高いと答え、また別の調査では約70%の人が、個人的に顧客を理解している小売業者やブランドとのみ買い物をすると答えています。
人間の基本的な欲求は、理解されることであり、人は小売店との関係にも同じ欲求を求めます。一人ひとりの顧客を真に理解していることを示す小売業者は報われるでしょう。つまり、パーソナライズされたコミュニケーションは、企業が個々の顧客を理解しており、データだけを頼りに顧客を一括りにしているのではないことを証明することになります。
組織全体で利用可能な適切な顧客データがあれば、顧客にパーソナライズされたメッセージやオファーを提供することができ、顧客が欲しい時に欲しいものを手に入れることができるようになります。これを実現した小売業者は、今年のホリデーシーズンに消費者の支持を確保することに成功するでしょう。