今日ご紹介するJETROのニュースは、EUへの越境ECに大きく関わるお話ですが、その前にマイクロプラスチックについて少しご説明します。
マイクロプラスチックとは
マイクロプラスチックは、大きく分けて「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」の2種類に分類されるそうです。
一次マイクロプラスチックは、洗顔料・歯磨き粉といったスクラブ剤などに利用される小さなプラスチックのことで、主に家庭の排水溝などから下水処理を通り、海へ流出します。
一度流出すると回収はできず、製品化された後の対策は難しいとされています。
一方、二次マイクロプラスチックは、捨てられたビニール袋やペットボトル、タバコのフィルターといったプラスチック製品が側溝などから川を伝って海へ流出し、紫外線による劣化や波の作用などにより破砕されて、マイクロサイズになったもののことをさします。
ごみの発生を抑制し、マイクロ化する前であれば、ある程度の対策も可能です。
「Oceana USA -Protecting The World’s Oceans-」のレポートによれば、現在、世界中の海洋には推定7,500万~1億9,900万トンのプラスチック廃棄物が存在しており、毎年さらに330億ポンド(約1,500万トン)のプラスチックが海洋環境に流入しているそうです。
EU、マイクロプラスチック添加製品の原則販売禁止を決定
欧州委員会は9月25日、マイクロプラスチックの販売や、マイクロプラスチックが意図的に添加され、使用時にマイクロプラスチックを放出する製品の販売を禁止する規則を採択しました(European Commission Press Release)。
同規則は、化学物質の登録、評価、認可、制限(REACH)に関する規則(注)の付属書17を改正するもので、マイクロプラスチックは、環境に一度放出されると、生分解されず、除去もできないことから、生物の体内での蓄積など、生態系への悪影響が指摘されています。同規則は、マイクロプラスチック添加製品を原則販売禁止にすることで、マイクロプラスチックの放出防止を目指し、規則施行後は、マイクロプラスチックを添加した対象製品の域内販売が順次禁止されます。
同規則は、有機性で不溶性、(生)分解されにくい5mm以下のすべての合成ポリマー粒子をマイクロプラスチックと定義。
マイクロプラスチックを含む製品のうち、マイクロプラスチックを意図的に添加し、かつ使用中にマイクロプラスチックが放出される製品の域内での販売が禁止となります。
対象品目は、意図的に添加したマイクロプラスチックの最大の放出源となっている、人工芝などスポーツ施設の表面を覆う顆粒インフィルのほか、角質除去などの目的で添加される化粧品や洗剤、柔軟剤など多岐にわたります。
販売の禁止時期は、対象品目によって大きく異なります。
化粧品などで既に使用が廃止されているマイクロプラスチックビーズなどに関しては、同規則の施行から20日後に即時禁止となりますが、顆粒インフィルは8年後から、その他のほとんどの対象品目については、4~12年という長期の移行期間を経て販売が禁止される予定です。
詳細は、同規則の付属書をご参照ください。
一方で、マイクロプラスチックが添加されているものの、マイクロプラスチックが放出されない、あるいは放出を最低限に抑えることができる製品、産業施設で使用される製品、医療機器や食品などの他のEU法令で規制されている製品は、販売禁止の対象外となります。
ただし、こうした製品の製造事業者は、自社製品からのマイクロプラスチックの想定放出量を毎年、欧州化学品庁(EHCA)に報告することや、放出を防止するための使用・廃棄方法に関する説明書を提供することが義務付けられます。なお、意図的に添加されていないが、マイクロプラスチックを含む製品については規制の対象外となります。
(注)REACH規則については、JETROの「EU 輸入品目規制 特定危険化学品に関する規制 詳細PDFファイル(392KB)」を参照
出典:JETROビジネス短信