※この文章は弊社EU担当の渡部による寄稿です。
こんにちは。ジェイグラブ EU担当の渡部です。
先日JETROにて、マレーシアにおけるEC市場の成長と動向についての分析・レポートと、現在マレーシアで急速にシェアを広げているECプラットフォーム「PG Mall」の最高執行責任者(COO)ジェリー・ウーン氏のインタビューが公開されました。
今回はこのJETROの分析・レポートを軸に、マレーシアのEC事情と「PG Mall」について少し掘り下げながら、シリーズ2回に分けてご紹介したいと思います。
マレーシア シェア第2位のECプラットフォーム「PG Mall」とマレーシアのEC市場
PG Mallは、3万件を超える販売業者が約2,000万点の商品を取り扱うマレーシアのEコマースプラットフォームだ。調査会社Statistaのデータによると、2022年第2四半期(4~6月)の月平均サイト訪問件数は2,000 万件を超え、マレーシアのECプラットフォーマーとしてはシンガポール系のShopee に次ぐ第 2 位となっている。2022年の流通取引総額は2021年に比べ8倍に増加するなど急成長を遂げるPG Mallのジェリー・ウン最高執行責任者(COO)に、マレーシアのEC市場や同社の戦略などについてインタビューした(取材日:2023年3月10日)。
引用元:JETRO 地域・分析レポート
■JETRO 地域・分析レポート
「成長を続けるマレーシアECプラットフォーマーのマーケティング戦略 PG Mall最高執行責任者(COO)に聞く」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/7d67fc8228f45203.html
※以下、インタビュー部分は上記リンク先から引用しています。
物流インフラ整備に伴い、Eコマース市場が成長
Q. マレーシアのEコマース市場の特徴と他国の市場との違いは? ジェリー氏: マレーシアは、ASEAN諸国の中では物流面が比較的整備されているのが特徴。インドネシアやフィリピンは地理的に分散しているため、物流に苦労することがある。また、一部の国ではいまだに現金払いが好まれることがある一方、マレーシアの消費者はデジタルに慣れており、デジタル決済が一般的となっている点もeコマースを後押ししている。 |
マレーシアではスマートフォン普及率89%。マレーシア人口の89%以上に相当する2,950万人以上がインターネットを使用しています。
東南アジアの電子商取引企業は、多数の島々や深いジャングルを特徴とするこの地域の分断された地形により、歴史的に物流上の困難に直面してきました。ただし、マレーシアの重要な地域はマレー半島とボルネオ半島の一部にまたがるのみであるため、物流ははるかにシンプルです。
Q. 今後のEコマース市場の動向は? ジェリー氏: eコマースは世界的に間違いなく成長していく市場だ。オンラインショッピングを促進するためのインフラ投資が増えるにつれ、業界は成長し続けるだろう。例えば、PG Mallでは物流会社とシステムを統合するなど密に連携をし、顧客の要望が高い当日・翌日配送の実現に向けて配送の効率化を進めている。 また、若い世代はオンラインで買い物をする傾向があるため、彼らの年齢が上がるにつれて購買力が高まることが期待できる。物流やインフラの改善の余地はあるが、eコマースはさらに拡大するだろう。 |
eBayが2004年にマレーシアへ進出したのを皮切りに、マレーシアのオンラインショッピングへの取り組みは始まりました。
その後、2012年と2015年にLazadaとZalora、Shopeeという主要大手ECプラットフォーマーがマレーシアで事業を開始し、殊Shopee は時間の経過とともに驚異的な成長を遂げました。
JETROでは、マレーシアの今後のEC市場の展望として、以下の3つを挙げています。
1、eコマースの成熟化に伴い、成長は安定
2、若い世代のオンラインショッピング志向により、売上が増加
3、オンライン・オフラインがシームレスなショッピング体験を
マレーシアのスマートフォンユーザーの80%は現在、オンラインショッピングのツールとしてスマートフォンを使用しています。
モバイルアプリはモバイルデバイスで最も人気のあるeコマースチャネルであり、全取引の64%を占めています。
また、マレーシアでは、すべての電子商取引取引の93%が銀行振込とデジタル決済を通じて行われており、この点がASEAN諸国と比較しても際立っている点です。
マレーシア政府はさらに、電子商取引の成長が包括性のツールであると認識し、地元の中小零細企業(MSME)の強化への支援を宣言。
MSMEの世界市場を拡大するために、2017年からデジタル自由貿易区を設立するなど、マレーシア政府の電子商取引に関する国家戦略ロードマップも確立されています。
JETROの「マレーシア EC 市場レポート(2023 年 3 月)」によれば、
「マレーシア人は週末に家族で買い物に行く習慣があり、ショッピングモールでの買い物をレジャーとしてとらえているため、全ての買い物がオンラインに移行するとは考えにくい。一方で、94%の消費者がコロナ後もデジタルサービスを利用している。」ことから、「マレーシアではeコマース市場は今後も安定的な成長を遂げるものと思われる。」と分析しています。
独自の紹介プログラムにより顧客数を伸ばす
Q. 創業の経緯とPG Mallの特徴は? ジェリー氏: 金製品の販売を行っている姉妹会社、Public Goldの創業者が取り扱い製品の拡大に商機を見いだしたことがきっかけで誕生した。eコマースの知見や後述の紹介モデルには、Public Goldのビジネス基盤を生かしている。PG MallのユーザーもPublic Goldの顧客から始まったため、ユーザーの95%がマレー系であるのが特徴。 |
PG Mallの強みは、東南アジア(SEA)全域で30万人以上の顧客(2019年時点)を持つPublic Goldと顧客基盤を共有していることです。
PG Mallは、この種の既存の外資系巨大コングロマリットの中で、マレーシア初の国産オンライン・マーケットプレイスであり、この業界ではかなり新しいにもかかわらず、設立当初から目覚ましい収益成長を遂げています。
Q. 競合他社との差別化は? ジェリー氏: 多くのeコマース企業は市場に参入すると、マーケットシェアを獲得するために多額のマーケティング費用を投入する。マーケットシェアを獲得後、割引や送料無料などのキャンペーンを終了し、販売業者からの手数料を引き上げるなどすることで利益を維持することが多い。この戦略は一般的だが、かえって市場シェアを縮小させ、最終的に市場シェアやトップの地位を失い、撤退することにもつながることもある。 一方、PG Mallはバーンレート(資金燃焼率)を抑えた独自のマーケティング戦略「ConsuMerchant」を実行している。「ConsuMerchant」(「Consumer:消費者」と「Merchant:マーチャント」を組み合わせた造語)は、新しい顧客をPG Mallに紹介することで報酬を得ることのできる仕組みで、PG Mallの特徴的なビジネスモデルだ。このシステムも好影響を及ぼして顧客は200万人を超え、流通取引総額は2021年から2022年の1年で8倍に増加した。 |
次回は、マレーシアから見た日本の越境ECの展望、PG Mallと日本の協業などについてご紹介します。