こんにちは。ジェイグラブの横川です。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、日本は欧米諸国と歩調を合わせ、ロシアへの制裁を行っていますが、中国はロシアの軍事侵攻には表立って触れることはせず、ロシアへの制裁を違法だと反発し、ロシアへの経済協力を国として進めることを公表しています。
その影響もあり、中国の代表的なECマーケットプレイスであるJD.comには、駐中ロシア大使館のお墨付きを得た「ロシア館」という特設サイトで「応援購入」が殺到し、ロシア製品がぞくぞく完売して、ロシア人担当者が中国人ユーザーに感謝の意を伝えたというニュースが有りました。
中国は情報統制、行動制限の多い国なので、国の動員がかかっているでしょうから、ユーザーが本当にロシア支持をしているのか、その辺ははっきりしませんが、少なくとも表面的に見える現象からは、中国は日本とは明確に正反対の立場を採っています。
ウクライナ紛争終結後の世界秩序では、成り行きによっては、中国ECが、より難しくなるという、中国に夢を見ている人にとっては、あまり考えたくない将来も本気で計算しておく必要もあるような気がしています(もともとインバウンド爆買いのときから日本へお金が流れることに中国政府は苦々しい表情でしたしw)。
今回はそうした現象を伝える記事2本から抜粋してお伝えいたします。
中国にあるロシアのECショップが、にわかに活況を呈す
欧米諸国がウクライナ侵攻を理由にロシアに厳しい制裁を加えている中、中国ではロシアのECショップで商品を購入し、モスクワへの支持を示す人が出てきている。
短編動画アプリ「Douyin」などの中国のSNSは、危機に関する偽情報や挑発的な内容を広める数万件のアカウントやコメントを削除したが、中国市民からの共感や反戦のメッセージも当局によって検閲されたり消されたりしている。
中国の国営放送によると、中国のECプラットフォーム「JD.com」でロシアの食品を中心に販売する「ロシア国家館」にネットユーザーが殺到している。陝西省共産党支部が監修するニュースメディア「陝西日報」によると、このショップは在中国ロシア大使館の支援を受けた唯一のECサイトであるとのことだ。
現在、商品のほとんどが売り切れとなっており、同店は、中国の消費者に「この複雑で変化する国際情勢の中で、中国の古い友人たちの友情が見える」と感謝するビデオを掲載した。また、同時に「”合理的な買い物をするように(「西側諸国の報道に惑わされずに」の意か)」と呼びかけた。
自由な活動が少ない中国では、市民はしばしば特定の商品を拒否したり購入したりすることで政治的スタンスを表明する。昨年、ナイキやH&Mといったブランドは、強制労働の懸念から新疆ウイグル自治区産の綿花を使用しないことを約束し、中国の消費者からの不買運動に直面した。
参考:A Russian e-commerce store in China is suddenly seeing brisk business
中国EC内のロシアのチョコレートショップが人々に感謝する理由
駐中国ロシア大使館のお墨付きだという「ロシア国家館」のオンラインショップの店頭には、KDVキャンディーからチョコレートウエハースまで、売り切れの表示が複数出ている。
中国のECプラットフォームJD.comにあるロシア経営のオンラインストアは、ほとんどの商品が売り切れた後、中国の消費者の支援に感謝し、「困難な」時代における国の友好を示したと述べた。
「親愛なる中国の友人たちよ、この困難な時期にロシアとロシア国家館を支援してくれてありがとう」と、オンラインストアに投稿された短いビデオの中で、非営利団体ビジネスロシア代表のセルゲイ・バツェフと名乗る男性が語っています。
地元メディアによると、この動画は水曜日に投稿され、ショップのフォロワーは水曜日の朝には10万人未満だったのが、木曜日の午後には100万人を超え、一気に急増したとのことです。
中国はロシアのウクライナ攻撃を非難することも、侵略と呼ぶことも拒否し、交渉による解決を繰り返し求めてきた。中国のソーシャルメディアユーザーは、この紛争におけるロシアの立場を圧倒的に支持し、多くはNATOの拡張を非難している。
同じくECプラットフォームで人気のアリババの淘宝網(タオバオ)では、ロシアのチョコレートを買った人が「ロシアを応援するために購入した」というコメントを残していた。
「フレー!、フレー!、フレー!ロシア頑張れ!」と、励ます人もいた。「ロシアを応援することは、自分たちを応援することと同じだ」。
それほど多くはないが、戦争に反対する主張もある。しかし、北京のカナダ大使館の壁の外に掲げられた「我々はウクライナと共にある」という看板が、赤いペンキでNATOを批判するメッセージで汚された。
一方、ウクライナ製品を支持する声も聞かれた。ウクライナの製菓会社ロシェンのチョコレートを購入したある顧客は、ウクライナへの支援を促すコメントを残している。
参考:Why a Russian chocolate store on Chinese e-commerce platform is thanking people
おわりに
私は、いまから10年前、2012年の尖閣諸島問題に端を発した反日暴動を忘れてはいません。問題は日中間の政治問題だったのに、最後は見事に経済問題になりました。しかもこれは「民意で起こったこと」という演出でしっかり中国政府の意を受けた形で行われていました。中国との関係は細い糸でつながっているようなもので、いつでも切れる可能性があるということです。
参考:中国で反日デモ 写真特集(時事通信、2012年)