こんにちは。ジェイグラブの横川です。
日本は30年近く、収入が上がらず、物価は低いままという状態が続きましたが、現在は物価は上昇し、収入は微増という状態で苦しんでいます。中国や欧米圏も日本とは異なる事情で景気が良いとは言えず、現在消費者の多くはディスカウントされたものを求めています。
日本から越境ECを行う場合は、円安がプラスに作用し、10年前なら高いと思われていたものが、比較的割安に見られ、昔に比べれば買われやすい状態とは言えます。しかし、それも限度があり、もともと高級路線を謳うものは早々簡単には売れていきません。
こうした事情の中、中国発のプラットフォームが世界中を席巻し始め、ディスカウントされたものを求める消費者のニーズを拾い上げると同時に、そのあおりを既存事業者が受けているという話題がありました。
中国のeコマース安売り競争、既存企業を圧迫
欧米ではホリデー商戦、中国では「独身の日(Singles’ Day)」が間近に迫っている。
世界最大のEコマース市場である中国のプラットフォームは、昨年末のCOVID-19規制解除後、経済不安と小売回復の予想以上の遅れに煽られ、「バリューフォーマネー争奪戦」が起きていると最近言われている。
一方、東南アジアから北米、ヨーロッパに至るまで、世界の他の多くの地域では、消費者はPDDホールディングスのTemuやBytedance傘下のTikTok Shopのような急成長中のプラットフォームのとりこになっている。
中国は消費者向け製品の輸出大国であったが、ECマーケットプレイスのダイナミクスを世界に広げたこの最新の輸出トレンドは、世界のオンライン・ショッピングを揺るがしている。
中国の低コスト・プラットフォームや、中国から出荷する多国籍企業は、中国最大のショッピング・フェスティバルと同様に、重要なホリデー・シーズンを含む今年の最終四半期を形作ることになりそうだ。
アリババの元グローバル・キーアカウント責任者で、「EC再構築」という著作のあるシャロン・ガイは「TemuやSheinのような安価な中国製品が流入してくるのを目の当たりにし、「競争できるかどうかわからない」という思いで揺らいでいます。」と語る。
しかし、低価格プラットフォームへの流れは真空地帯で起きているわけではなく、中国経済の不確実性の中でのベルト引き締めや、アメリカやヨーロッパ市場のインフレが個人消費を圧迫するなど、さまざまな市場が直面しているマクロ経済的な課題によって後押しされている。
中国のPinduoduoやDouyin、TemuやSheinなど、急速に台頭しているディスカウントの競合他社は、カナダからオーストラリア、そしてラテンアメリカや一部のアジア市場にまでサービスを展開しており、高価格帯の商品よりも10ドルのドレスや5ドルのヘッドホンを手に入れることに喜びを感じる消費者の間で市場シェアを拡大するため、補助金やディスカウントに数十億ドルを投じている。
アマゾンは、10月10日から11日にかけて開催される “プライム・ビッグ・ディール・デイズ “で割引を強化する予定だ。
「Eコマースという観点から見ると、アマゾンでさえも、現在、大量の値引きが行われていることに間違いなく気づくでしょう」と、デジタル広告代理店ハイリンク・デジタルの米国マネージング・パートナーであるハンフリー・ホーは言う。
多くの市場における底値争いは、TikTok Shopの参入によってさらに激しくなりそうだ。TikTok Shopは、SheinやPDD ホールディングスのTemuが成功を収めたように、米国でも中国製商品に焦点を当てるだろう。
TikTok Shopはすでに、米国のホリデーシーズンに大幅な割引やプロモーションを提供する加盟店を準備している。同社は、これらの割引のコストを相殺するために加盟店の手数料を免除し、販売者がより多くの商品をTikTok Shopに持ち込み、アマゾンから離れることを奨励している。
インドネシアでは、TikTok Shopが安価な商品で溢れかえることを懸念し、オフラインの販売者を保護するため、ソーシャルメディア上での電子商取引を全面的に禁止することを検討している。
※4日に書いた「インドネシア、ソーシャルメディア上での購入を禁止」参照。
バリュー・バキューム
安価なオンライン・プレイヤーの台頭は、世界的な市場シェアの拡大とともに、以前から存在していたEコマースの低価格帯のスペースを埋めつつある。
「ディスカウントストアのオンライン体験には、明らかな空白があった。ディスカウントの分野では、まだまだ成長の余地があります」と、米国と中国の企業を専門とする技術アナリストのルイ・マーは言う。
世界中で、ディスカウント・オンライン小売業者が市場シェアを拡大するなか、経営幹部は価格圧力に注目している。中国の電子商取引大手アリババが先月発表した最新の四半期決算報告後のアナリストとの電話会見で、タオバオとTmallグループのトゥルーディ・ダイ最高経営責任者(CEO)は、「価格競争は今後も続き、主要な投資分野となるだろう」と述べた。
大手のアリババとJD.comは直近の四半期で予想を上回る成長を遂げたものの、同社のディスカウントeコマース・プラットフォームPinduoduoが中国国内で価格に敏感な顧客を引き付け、同社の国際ショッピングサイトTemuが他地域で急成長を続けたため、PDDホールディングスの前年同期比66%増収に比べれば、その成長率は遥かに小さいものだった。
一般的な構造的・マクロ的環境は、このような底辺への競争への道を開いたが、より広範なトレンドの変化は、Eコマースの消費者やプラットフォームにも同様に、焦点の転換をもたらすかもしれない。
「中国国内では、各プラットフォームは消費者心理の変化に対応しています。欧米では、インフレに振り回される消費者は、経済的な不安を経験しているため、より安いものを求めます。もし消費者が経済的に良い時を過ごしていれば、常にアップグレードを求めるでしょう。もし景気が回復し始めたら、このような(ディスカウントに特化した)プラットフォームの成長に影響を与え、減衰させるかもしれません」。
参考:China’s e-commerce discount race to the bottom puts incumbents under pressure
おわりに
この記事ではディスカウントの負の部分に焦点を当てた内容がクローズアップされていましたが、ディスカウントすることが必ずしも悪いことではありません。
ディスカウントは、定価で買わせるための布石としての戦略的値引きとしても利用できるのです。
何を言っているかわからないと言う方もいるかも知れませんが、結構ここで商売センスのあるなしがでてきます(もちろん商品のジャンルによります)。
商品を売るために敢えて値引きすることを提案することがあります。このとき拒絶する人の気持ちとしては「一度値下げして、それで味をしめられたらたまらない」と考えるのだろうと思います。
しかし、私たちが提案するのは期間限定のキャンペーンとしての値下げです。海外の人にとって、御社の製品に興味があっても、もし買って失敗したらどうしようという思いがあります。そこで、失敗しても諦めのつく価格でテスト的に買ってもらうのです。それで気に入れば、次回以降は定価で繰り返し買ってもらえます(相手もディスカウントされた価格で買えるのはこのときだけだという認識は普通に持っています)。実際、初回は赤字でも次回以降は普通に定価で繰り返し買ってもらえている商材はありますし、そうしているうちに初回の赤字分はペイできています。
送料の計算の仕方でもそうですが、1円の損も何が何でも出さないという守銭奴経営は越境ECではうまくいきません。