こんにちは。ジェイグラブの横川です。
今回は海外の「中国にECで進出する9つの方法」という記事を紹介します。全体のトーンとしては可能性を感じさせる内容ですが、よくよく記事を読み、記事の背景を読むとやはりそう簡単ではないエリアであることがわかりますので、このブログの終わりにしっかり水も指しておこうと思います(笑)。
中国で販売するための9つの方法。EC担当者のためのヒント
中国のオンライン市場は、経験豊富なeコマース企業にとって大きなチャンスですが、参入には多くの障壁があります。
世界で最も人口の多い国、中華人民共和国は、16兆ドル近いGDPを持つ世界第二位の経済大国です。そして、本当に驚くべきは、その経済成長のほとんどが過去30年間に起こったものであるということです。多くの外資系企業(中国に本社がない企業)は、この潜在的な可能性に目を輝かせていることでしょう。
しかし、残念なことに、この市場は(日本を含む)西側諸国企業にとって参入が難しい市場であることはよく知られています。それは、以下のような問題です。
- 複雑で一貫性のない官僚制度をうまく利用するのが難しい
- 消費者の購買習慣に対する理解不足
- 汚職や透明性の欠如
- 現地労働者の調達と従業員の管理
- 激しい競争(中国企業に有利な規則、外国企業には高額なコスト)
とはいえ、進出自体が不可能ではありませんし、必要なコストや時間に覚悟が決まればそれをはるかに上回るメリットを享受する可能性があります。
この記事では、ビジネスを行う上でのユニークな課題について説明し、eコマース企業が参入するだけでなく、成功するためにできる9つのことを見ていきましょう。
1.中国の消費者行動を理解する
中国の消費者は、アメリカやヨーロッパの消費者と同じように行動しているわけではありません。
それは検閲法の影響もあり、欧米の検索エンジンは中国で大きな存在感を示していません。その代わり、中国にはいくつかの国産検索エンジンがあり、それぞれが市場でニッチな地位を占めています。
中国のインターネットユーザーの99.7%はスマートフォンからウェブにアクセスしており、消費者の大半はモバイルデバイスでこれらのエンジンを利用しています。
それだけではありません。中国人民は、独立した企業のECサイトを訪れるよりも、複数のブランドを選択できるシングル・エントリー・ポイントのショッピング(=ECモール)を好みます。例えば、ナイキなら、ナイキのサイト自体から購入するよりも、Tmall(天猫)から購入する傾向があります。
また、中国の消費者は、インフルエンサーやソーシャルメディアに大きく影響されます。中国企業は、自社アプリを製品発表のチャネルとして著名人に積極的に利用してもらうよう働きかけています。また、ソーシャルメディアの投稿からオンラインストアへの直接リンクにより、消費者はお気に入りのスターが履いていた靴を簡単に見つけて購入することができます。
さらに、経済成長により、品質や利便性、顧客サービスなどが重視されるようになっています。
2.適切な製品を選ぶ
以前の中国の世代は集団化を重視し、社会への利益を求めていたかもしれませんが、現代の中国の消費者はより個人的な考え方に移行しています。
アクセンチュアは、「Chinese Consumer Insights 2022」と題するホワイトペーパーで、2013年から2021年の間に、自分のアイデンティティを強調する製品を購入する消費者が11%増加することを明らかにしています。これは、7億人以上の中産階級の国民を誇る中国において、驚くことではありません。
中国でのeコマース・マーケティングを成功させるためには、消費者が求めている商品を販売する必要があります。中国のデジタル市場では、レジャー用品、テクノロジー、美容・化粧品、衣料品などが依然として注目されています。
外国製品への需要は高いものの、国産品のプレミアムな代替品と見なされる必要があるのです。
アリババが所有する英字新聞「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、中国は2020年に世界の高級品市場の32%を占めると主張しています。中国市場への進出を目指す外国企業にとっては、大きなチャンスです。
3.ウェブサイトのローカルホスティングを設定する
中国の検索エンジンは、中国国内のサーバーでホストされているウェブサイトを優先的に表示する傾向があります。既存のオンライン・ストアの中国語版を立ち上げるだけでは十分ではありません。
中国の消費者の検索に表示されるには、中国国内でホストされているサイトが必要です。しかし、いくつかのボタンをクリックし、クレジットカード情報を入力するほど簡単ではありません。
中国でウェブサイトをホストする前に、中国工業情報化省(MIIT)にインターネットコンテンツプロバイダ(ICP)登録を申請する必要があります。
該当する業界(教育、医療、金融サービスなど)によっては、申請前に関連政府機関の許可を得なければならない場合もあります。
ICPの商用ライセンスのほか、データやトランザクションを処理する予定がある場合は、電子データ交換(EDI)の取得が必要です。
しかし、中国に物理的な拠点を持つ予定であれば、ICPは必要ない場合もありますが、ICPが必要な場合は、すべての手続きに数ヶ月かかる可能性があることにご注意ください。
4.信頼できる決済代行業者を利用する
中国における決済の仕組みは、皆さんが慣れ親しんでいるものとはだいぶ異なります。
一つは、取引の種類によってモデルが異なることです。このような複雑な要件を自分で解決しようとすることもできますが、AlipayやTenpayなどのサードパーティのオンライン決済プラットフォームと連携することが推奨されます。
アリババのアリペイは、中国の主要なeコマースプラットフォームであるTMallやTaobaoの主要な支払方法です。アリペイにはエスクロー機能があり、支払いを受ける際のリスクを軽減することができます。利用するには、中国の電話番号、銀行口座、中国のビジネスライセンスが必要です。
TencentのTenpayもエスクロー機能を提供しており、設定もよりシンプルです。ライセンスを取得するには、中国でビジネスを行いたいことをTencentに証明し、海外のECサイトを提供する必要があります。そのためには、中国から見えるWeChatアカウント、越境決済アカウント、WeChat eコマースサイトが必要です。
注:WeChatアカウントと外国人営業許可証は、標準的なプロセスではありませんが、テンセントを通じて直接申請することができます。商品検査証明書により、商品が合意された品質要件を満たしていることを証明し、支払いリスクを最小限に抑えることができます。
5.卓越したカスタマーサービスを提供する
中国のビジネスは、「关系(関係)」と呼ばれる概念の上に成り立っています。大雑把に訳すと、暗黙のうちに信頼と相互の義務を伴う個人的な関係を意味します。これは、歴史的にビジネスがどのように行われるかの重要な側面であったため、中国の消費者は、上下関係、交渉、顧客サービスに対する期待が染み付いているのです。
eコマース企業にとって、最初の2つはさほど重要ではありませんが、3つ目(顧客サービス)は非常に重要です。デジタル市場での競争は激しく、中国の消費者は優れたカスタマーサービスに慣れています。彼らは、迅速な配送と返品、中国語での明確なコミュニケーション、簡単なモバイル決済などを期待しており、貴社もそれを提供すべきです。
また、彼らはソーシャルメディア上で意見を共有することを恐れないため、悪い顧客体験は広範囲に影響を及ぼす可能性があります。
6.適切なロジスティクス・ソリューションを選択する
納期が遅れたり、商品が破損したり、返品が難しかったりすると、中国の消費者は離れていってしまいます。つまり、ロジスティクスは鉄壁のものでなければならないのです。
しかし、残念ながら、中国本土で高品質のプロバイダーを見つけることは困難です。
そこで、選択肢は3つ。自社で構築する、既存企業と提携・買収する、優良なサードパーティプロバイダーを見つける、です。
最初の2つの選択肢は、ほとんどのeコマース企業にとって時間と費用がかかるため、3番目の選択肢しか残されていません。中国の物流業者は、一般的に2つのカテゴリーに分類されます。
- 大きなネットワークで勝負する企業
- 優れたサービスによって競争する企業。
どちらが適しているかは、販売するものによって異なります。例えば、ペットロック(石をペットに見立てたアイテム)を中国全土に販売するのであれば、サービスよりもサイズの方が重要です。製品が破損する可能性は低く、購入者の手元に届くことが第一の目標です。
一方、上海都市圏でクリスタルの巣箱を販売するのであれば、より高いレベルのケアとサービスを提供できる小規模な物流会社の方が望ましいと思われます。
7.トップマーケットプレイスの活用で、より多くの消費者にリーチできる
最初のヒントで述べたように、中国の消費者は、独自ECサイトよりもマーケットプレイスを好みます。自分のサイトを通じて販売することもできますが、Taobao、Tmall、JDなど、中国の大きなオンラインマーケットプレイスのどれかに所属していれば、より多くのオーディエンスに露出することになります。
2019年、淘宝網(タオバオ)は商品総量で4900億ドルを突破しました。天猫(Tmall)は4635億ドルで2位、亰東(Jingding/JD)は3010億ドルで3位を主張しています。
ご覧の通り、これらのサイトが占める売上高の多さは驚異的です。タオバオとTmallはともにアリババの傘下です。Jingding(JD)は、Tencent(テンセント)がサポートしています。
これらのプラットフォームで販売するには、通常、中国本土で会社を登録する必要がありますが、一部の製品カテゴリでは例外もあります。
また、これらのプラットフォームは互換性がありません。Tmallは一般的にTaobaoの高級版とみなされており、消費者は海外から本物のブランド品を見つけるためにTmallを信頼しています。JDは冷凍食品から電子書籍まで、幅広い商品を扱っています。
8.ショッピングフェスティバルを利用する
欧米のオンラインショップがサイバーマンデーやクリスマスイブ、グリーンマンデー、アマゾン・プライムデーなどを開催するように、中国にも大きなショッピングの祭典があります。売上を最大化するためには、これらを意識し、上手に利用する必要があります。これらは以下の通りです。
- 新年前(1月~2月) – 欧米でクリスマス前の数日間が大量の買い物をするように、年霍節や旧正月前の数ヶ月は、eコマース小売業者にとって忙しい時期である。
- 国際婦人デー(3月8日) – アリババは「女王祭」、JDは「胡蝶祭」と呼び、この日とその前日(3月7日の雛祭り)は、男性が大切な人に贈り物をする日として、大きなオンラインショッピングが行われます。
- 母の日(5月第2日曜日) – 親孝行は中国文化の大きな部分を占めるので、母の日が盛大に行われ、それに伴いプレゼントの購入も増えるのは当然のことです。
- 5月20日(ラブ・デー)-非公式なバレンタインデーで、中国語では「5・2・0」が「I love you」の同音異義語であることから、ラブ・デーがこの日に行われる。伝統的なバレンタインデーもこの日に祝われる。
- 中元節(6月中旬) – 中国のプライムデーに相当する夏のイベントで、JDの創業日6月18日が起源でJDが始めたものだが、他のオンライン小売業者も採用した。
- ゴールデンウィーク(10月1日~) – 国慶節を皮切りに、旅行、家族団欒、贈答などの習慣があるため、1週間の連休で消費が大幅に増加する。
- シングルズデー(11月11日) – 1993年に初めて祝われ、11月11日は独身であることを祝う大規模なオンラインショッピングの日になった。その1ヶ月後の12月12日(12/12)には、多くのオンライン・ショップが在庫一掃イベントを実施します。
9.中国のソーシャルネットワークでプロモーション
中国の人々は、世界の他の国々と同様、ソーシャルメディア・プラットフォームを愛していますが、FacebookやInstagramのような馴染みのあるプラットフォームとは切り離されています。しかし、独自SNSは有料広告を含む多くの機能は共通しています。前述1では、これらのサイトがオンライン販売に果たす役割について述べました。
中国のソーシャルポストで商品をクリックすると、オンラインストアでその商品に直接リンクされるため、インフルエンサーは購買決定に大きな影響を与えることができ、この市場に参入する良い理由となります。
さらに、欧米人と同様、中国人は日常生活のかなりの時間をこれらのサイトで過ごしているため、うまく商品を配置すれば、多くの露出を生み出すことができます。ここでは、中国で最も人気のあるソーシャルメディアサイトをいくつか紹介します。
- WeChat – 中国のFacebookと呼ばれることもあるWeChatは、正確にはFacebook、WhatsApp、Google News、デートアプリを合わせたような存在です。全世界で12億人の月間アクティブユーザーを抱えている。Tencentが提供するオールインワンのメッセージングアプリで、ゲーム、ショッピング、金融サービスも提供されている。
- Sina Weibo – 毎月2億5200万人がこのマイクロブログアプリを利用している。文字数制限がある一方で、動画、画像、GIFの投稿が可能な点でTwitterに最も似ている。
- Tencent Video – 世界第4位のストリーミングサービスであるTencent Videoは、12億人の月間アクティブユーザーを抱えています。中国のオンラインビデオ市場は競争が激しいが、Tencent VideoはライバルのIQiYiやYoukuを抑えて首位に立っている。
- Xiao Hung Shu – eコマースとソーシャルメディアのハイブリッドサイトで、ユーザーはレビューの投稿、ディスカッションへの参加、コンテンツの投稿が可能です。ほとんどのコンテンツは、商品の写真やショッピング体験に重点が置かれています。毎月1億人のアクティブユーザーを抱えています。
- Douban – 月間アクティブユーザー数2億人のDoubanは、ライフスタイルコンテンツに特化したソーシャルネットワーキングプラットフォームです。電子書籍のダウンロード、音楽鑑賞、映画やコンサートのチケット購入などの機能が統合されています。
中国のEコマースは努力のしがいがある
このように、中国のデジタル市場に参入するには、かなりの労力が必要です。しかし、オンラインショッピングは中国経済の大きな部分を占めているため、努力する価値はあります。
ただし、法的、文化的、デジタル的なハードルに直面する可能性があることは認識しておいてください。また、設立のプロセスには、慣れないうちはかなり時間がかかるでしょう。
とはいえ、複雑な官僚主義を切り抜け、最初は異質に感じるかもしれない戦略を立てるための時間、忍耐力、語学力があれば、世界最大のオンライン市場の1つで足場を築くことができるでしょう。
中国の人々は、国際的なブランド、特に高級品と認識されているブランドに強い関心を寄せています。でも御社が高級品メーカーでなくても、気を落とさないでください。中国のオンライン市場は、あらゆる種類と規模のビジネスに多大な機会を提供しています。下調べをし、適切なルートを通れば、中国でのeコマースで成功することができるでしょう。
参考:9 Ways To Sell In China: Tips For Ecommerce Marketers
まとめ
この記事でさり気なく触れていますが、中国でのビジネスでは关系(関係)が重要であるという点。日本でも歴史の長い街の企業とのビジネスではこうした点が重要だったりすることもありますから、そうした経験がある方はピンと来るでしょう。そもそも日本とは国家体制からして、あらゆる点で環境が違うということを忘れてはいけません。
さて、先日紹介したブログで「国際的緊張の中でも中国人は欧米製品を欲しがっている」という記事を紹介しました。
・約半数はもっと欧米製品を買うと返答
・約6割は欧米にはこだわらず、日用品を買うと回答
・上記約6割の回答者のうちの約半分は、日韓を含む近隣諸国の物も買うと回答
という内容でした。
このデータからは、全体の約3割が欧米製品に強烈にこだわるわけではないということがわかります。この3割が、日本の製品も買う「かもしれない」層となります。
データがありませんが。東南アジアや韓国製品も含まれますから、日本製品だけに絞ったらよくて1割位でしょうか(過去の歴史的な面から、どんなに金を持ってても、日本製品を優先的に選ばない人というのもいるでしょうし)。
今の中国はかつて日本が通ってきた道を歩んでいます。(世代を選んでしまう話になってしまいますが、)かつて景気の良かった日本では、左ハンドルの車、ヨーロッパのブランド、ヨーロッパの料理、何でも横文字にしたり、会話中に現地発音をいきなりぶっこんでカッコつけることでステータスシンボルマウント合戦をしていたものです。
いま、こういうフェーズに中国があるということは、日本企業は、欧米の老舗ブランド、高級ブランド、五つ星ブランドに挑む戦略が要るということになります。記事中にあった「国産品のプレミアムな代替品と見なされる必要がある」ということです。日本国内の知名度ですらそこそこというものが、このレベルになるわけがなく、身の丈に合わない戦略は失敗するだけという事がわかるでしょう。
極論すれば知名度がないという場合は、スタートラインに立つのも難しいのだという覚悟が必要です。私達が日本で知名度の低い外国ブランドに手が出ないのと同じことを思えば、日本製なら中国人は買うと思うのは中国人を甘く見すぎだと思います。
そして、5日の夕方に「東南アジアで行われている国際会議で日本の林外相の発言中に、中国の王毅外相が退席した」というニュースが入ってきました。王毅さん、張り切ってますね(笑)。
ペロシ下院議長の訪台で、中国は台湾周辺での軍事演習以外に、ーーまだ通商面での対抗措置ではありませんがーー8項目の対抗措置をアメリカに対して打ち出しました。
したたかな中国はアメリカが真のターゲットではあっても、アメリカの周辺の友好国から締め上げにかかります。対中越境ECとは、経済安全保障という観点で、こうした情勢を頭に入れながら考えていく地域です(10年前の尖閣諸島問題では、中国内の日系企業打ちこわし暴動がありましたよね。それが中国の通常運転です。あとレアメタル禁輸というのもありました。一瞬焦りましたね。これは中国が墓穴を掘りましたが)。
最後に、記事の筆者は「中国ECは努力のしがいがある」と締めくくっていますが、これは裏を返せば「努力(大枚はたくことも努力のひとつ)する気がなければ絶対失敗」すると言っているようなもので、物は言いようだなと思いました。日本企業は外資企業的な目線で見ると「甘さ」が目立つ印象が強いので、気を引き締めないと(慎重になりすぎて動きが遅くなることとは違います)多くの企業は進出はできても成功には達しないような感じを個人的には持ちます。
とはいえ、ジェイフラブではここまでの現実を理解した上で日本企業にとってよりよい中国進出の方法を模索し、提案いたします。