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越境ECブログ

PL保険と越境EC販売に関する訴訟について

こんにちは。ジェイグラブの横川です。

「万が一」。重要なことではありますが、日本企業はこの「27年間(1万日)に1日あるかないか」といったレベルのことを決めるのに時間をかけすぎという印象があります。しかし、心配は心配ですから考えておく必要はありましょう。

PL保険ですが、「越境ECを始めるにあたり、PL保険を検討しようと思う」という考えがあると思います。これについて、

「その検討は正しい」といえる事業者と、
「間違ってはいないが、実はもうずっとこの間手遅れ状態だったかもよ」な事業者があります。

前者は、取扱商品が真に初めて海外に出荷されるという場合です。
後者は、御社が越境ECをやっていなくても、日本人が海外へのお土産で購入していたとか、インバウンドで外国人観光客が日本で購入して海外へ持ち出していたという事実がある場合です。この場合、何かあったときは訴えられていてもおかしくなかったので、越境ECをやると決めてから考え始めたのでは、実は手遅れで、むしろ今日まで何もなかったほうがラッキーだったねという可能性もあったということになります。

一般的にPL保険絡みの訴えが起きるときは、原告側が、損害発生の事実を挙げ、製品の設計上の欠陥、製造上の欠陥、警告・表示上の欠陥のうちのいずれかを挙げ、それらの因果関係が証明されたときにはじめて問題となります
(逆に言えば、これらの要件を満たしにくければ、保険を無理して考える必要もないとも言えます)。

消費者が単に使い方を間違えたといった程度では対象にはなりにくいです。ただし、「警告・表示上の欠陥」があって、どう考えても普通は使い方を間違えるよねぇ、となれば対象になる可能性が出てきます。日本企業の場合、商品説明等が足りないとか、翻訳ミスで誤解を招いていたというような形で問題になるというリスクはあるかもしれません。

なお、アマゾン・アドバイザーズというサイトでは、アマゾンがPL保険の加入を推奨しているという記事を掲載しています。

詳しく見ていくと、1,000ドル未満の取引でのトラブルに対しては、アマゾンが買い手に対し全額保証し、また、アマゾンが立て替えた分を売り手に転嫁することもないと記載されています。しかし、1,000ドル以上の場合は売り手が責任を負います(そのため保険加入が推奨されます)。また、月商10,000ドル以上の取引がある場合、アマゾンは売り手に対し、PL保険の加入を義務付けました。同サイトによると、米国では80%近くが1,000ドル未満の取引であり、その場合の多くが訴訟にまでは発展していないからということのようです。
参照:Amazon Product Liability Insurance: What Sellers Need To Know

ちなみに、訴訟というと、「アメリカは訴訟社会で、些細なことで訴えが起きる」という誤解をしている人もいます(日本に比べたらそう思えますが^^;)。しかし、実際は訴訟になっても圧倒的に和解で終わっています。

また、中高年以上の人には「マクドナルドのコーヒーで火傷をした女性がマックを訴えて3億円近い賠償を受け取った」という話が記憶にあり、それで恐怖心を持っている方もいると思います。

実は、あれは、日本のマスメディアの不勉強からくる配信が原因で、実際は少し違います。
火傷をした女性は治療費だけを求めました(救急車を呼んだだけで2~30万請求される、皆保険制度がない国なので、それなりに高いですが)。それに対し、マクドナルドが非協力的な態度や発言をしたことが陪審員の心象を悪くし、懲罰的罰金が課されて億という額になってしまったのです。この懲罰的罰金というのが日本の法制度にはないので、ピンときませんが、英米法ではしっかり確立されています。

ちなみに国際訴訟になった場合は、問題そのもので争う前に、どちらの国の法律で争うかというところから始めます。

たまに、PL保険に入ったほうがいいかどうか聞いてくる人がいますが、どちらでも構いません。
どんなリスクが潜んでいるか、製造者でもない私たちが判断できるわけがありませんので、ご自身でご判断下さい。

Writer 横川 広幸

横川 広幸 取締役 越境ECコンサルタント eBayJAPAN創業時に法人営業、マーケティングに従事。eBayに連携した越境ECサイト “Tokyotrad” で日本の仏具を世界86カ国に販売。自らの越境EC成功体験を越境ECアドバイザーとして日本全国でセミナー講演や個別相談を行う。

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