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越境ECブログ

Amazon(イギリス)が初めて法人税を支払う背景と越境EC事業者が注意するポイントについて

近年イギリスにおけるオンライン小売業界は急成長を遂げていることはご存知かと思います。その代表格であるAmazon(UK)も、イギリス国内での売上を大きく拡大しています。その一方で、Amazonが納税する法人税や事業税額が他の小売業者に比べて低い点がしばしば指摘されていました。

今回は、イギリス政府が発表した新しい倉庫税引き上げの方針と、AmazonUKが2020年以来初めて法人税を支払うことになった背景について知っておくとUK向けの越境EC事業でも役立ちますので確認していきましょう。

政府による倉庫税引き上げ

Amazonやその他の大手オンライン小売業者が使用する大型倉庫に対する新税ですが、賃料が年間50万ポンド(約9,900万円)を超える施設が対象です。税の行き先は小売業、ホスピタリティ業、レジャー業といった他業界への税軽減の財源として使用される予定です。これにより、リアル店舗を持つ小売業者に比べて、オンライン小売業者が得ているとされる「不公平な優遇措置」を是正しようという意図が読み取れます。

パンデミックの影響で、リアル店舗が一時閉鎖されたり、売上が減少したりする中、Amazonをはじめとするオンライン小売業者の売上は大幅に増加しており、AmazonUKにおける2023年の売上は336億ドル(約3.6兆円)に達しており、前年比でも増加しています。ですが従来の税制下では低い税率の恩恵を受けているため、同社が英国経済にどの程度貢献しているかについては疑問の声も上がってい他のも事実。こうした背景から、今回の倉庫税引き上げは、オンライン小売業の納税額を増やし、リアル店舗を持つ小売業者との格差を縮小させる狙いがあったようです。

AmazonUK、2020年以来初めて法人税を支払う

一方、Amazonの主要な英国部門である「Amazon UK Services」が、2023年度において約1,870万ポンド(約37億円)の法人税を支払ったことが、先月報じられました。これは、リシ・スナク元財務大臣が導入した「スーパー控除」制度の終了に伴うものです。この制度は、2021年4月からの2年間、企業が設備や機械への投資額の130%を利益から控除できるというものでしたが、2023年度より通常の100%控除に切り替わり、Amazon UK Servicesの税額が増加しました。

越境EC事業者にとって問題なのが税負担分としてAmazonUKのFBA倉庫料金やシステム利用料などが値上げになるのではないかということです。

AmazonUSとAmazonUKの違い

ところで、海外Amazonで越境EC販売を行う事業者ですが、大半が米国Amazonには出店しますが、AmazonUKに出店しない、またはできないケースが多発しています。AmazonUSで作成したカタログやブランドを活用して言語は英語のままで価格をUSドルからポンドに変換すれば基本良いのでは?という認識だと思いますが、VATや納税問題、アメリカFBAを利用している場合にUKにも在庫を置かなければならない、実は同じAmazonでも国によりルールが大きく異なり販売する商品が結果的に事後承認されず削除されたりなど簡単ではないからという理由です。

AmazonUKでは商品を販売する際にVAT(付加価値税)の登録が求められます。特に年間売上が85,000ポンドを超える場合にはVAT申告支払が義務付けられます。アメリカにはVATの制度がないため、初めてのUK出店者にとっては少し複雑です。VAT番号を取得した後も、月次・四半期ごとの納税申告が必要で、これを怠ると罰金が科されることがありますので税務代理人サービスを利用することが一般的です。

次にイギリスの規制で食品や医薬品、化粧品、電化製品などに特定の基準やラベル表示が求めらます。EU指令に基づくラベル表示や製品安全基準に準拠するのですが、日本の商品は大抵が日本国販売だけを想定して日本語だけでラベル作成したり基準認証を取得していますが、EUではCEマーキング、UKCAマーキングが必要な場合もあり、特に電化製品や玩具などはイギリスの安全基準を満たしていないとAmazonUKでは商品削除されてしまいます。来年からより厳格に対処されますので注意が必要です。

サポートについてもイギリス消費者保護法により返品ポリシーが厳格です。アメリカのポリシーとは異なる対応が必要で、現地の顧客サポートが必要になる場合があります。

まとめ

Amazonでも国ごとに異なるルールではありますが、逆手に取れば日本事業者の出店が少ないブルーオーシャンなジャンルが数多くあります。しかし出しただけでは売れません。必ずプロモーションや広告を行う必要がありますが、最近弊社のクライアントで英国の広告規制(CAPコード)で、健康食品とサプリメントの宣伝で誇張や誤解を招く表現だと認識されたようで指摘が入りました。「誤解を招かない表現」も、日本と海外では異なり明確になっていない部分も多く解釈が難しいことがあります。

また自社ブランド保護のため商標登録がありますのでUKでもUSでも商標登録が推奨されていますが、登録しようとしたら商標が切れていたり…所持していないケースもあります。商標があれば「Brand Registry」に登録チャレンジしてブランド保持者となり模倣品販売を防止しやすくカタログ管理も容易になります。これらの規制に対応するには、現地の税務や規制について専門家のサポートを得たり、FBAや税務代理人サービスを利用して管理をスムーズにするのが効果的かと思います。

参考文献:
UK set to raise taxes on giant warehouses used by Amazon and other ecommerce giants(tech radar pro)
Amazon UK pays corporation tax for first time since 2020(The Guardian)

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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