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越境ECブログ

ARコマースで化粧品や家具を試着!越境ECでの拡張現実の魅力と可能性

以前、SNSプラットフォーム「Snapchat」をご紹介した際に、Snapchatの特徴の1つとしてAR(拡張現実)をご説明しました。

ARとは

ARとは、わかりやすく説明すると「拡張現実(Augmented Reality)」の略で、現実の世界にデジタル情報を重ねて見せる技術です。たとえば、スマートフォンのカメラで周りの風景を映すと、その画面上に実際にはないキャラクターや情報が表示されたり、カメラで人物の顔を映すと、人物の頭に子犬の耳が表示されたりします。これがARの一例です。

有名な例として「ポケモンGO」が挙げられます。このゲームでは、スマートフォンを通して街中でポケモンを捕まえることができますが、ポケモンは実際には存在していません。それでもカメラ越しに街の風景を見ると、まるでそこにポケモンがいるかのように見えるのです。

ARは「現実の場所」に「デジタルで作られたもの」を追加して、現実をより楽しく、便利にする技術です。

3D視覚化とARによるECの変革

オンラインショッピングの最大の課題のひとつは、実際の商品を見たり、触ったり、試したりできないことです。

たとえば、ジェイグラブでは、越境ECマーケットプレイス「j-Grab Mall」のオフラインショップとして、シンガポールやカンボジア、ロサンゼルス、ロンドンなどでショールームストアを展開してきました。現地に商品を持ち込んで、来店者に実際に商品を触れてもらったり、試食や試飲なども行うこともあります。購入はQRコード経由で「j-Grab Mall」サイトから行うというシステムですが、現地の顧客に好評を得ています。

j-Grab Mall 委託販売型越境ECプラットフォーム
https://www.j-grab.co.jp/service/mall/

また、Amazon Japanが提供している「Prime Try Before You Buy」では、最大4点の商品を取り寄せ、自宅で試着し、不要な商品は無料で返品できます。ただし、商品の試着と返品にはさまざまな条件があります。

これらの方法は、実物の商品を直接手に取る体験を提供しますが、AR技術と3Dビジュアライゼーションを活用すれば、制限なく複数の商品を「試着」でき、汚したりタグを切ってしまう心配もありません。

ECにおけるARの利用例

ここでは、海外で利用されているAR技術を活用したアプリをいくつか紹介します。

AR-Watches
AR-Watchesアプリでは、ブランド時計をARでバーチャルに試着できます。直感的なユーザーインターフェースと、包括的な製品詳細を提供しており、ARを活用したオンラインショッピングを簡単にします。

出典:ZOLAK

ETHAN ALLEN
アメリカの人気家具ブランドETHAN ALLENのアプリでは、カメラを通じて家具を自室の空間にビジュアル化できます。顧客は質感や色を確認しながら家具を選び、価格もすぐに計算できるため、スムーズにショッピングを楽しめます。このアプリでは、購入と配送の追跡も可能で、シームレスな買い物体験を提供します。

出典:ZOLAK

ModMyRide
このアプリでは、車の改造(チューンナップ)をリアルタイムで視覚化できます。新しいホイールのリムや、スポイラーなどのボディキットを瞬時にプレビューでき、迅速な購入決定や顧客満足度の向上に貢献します。

出典:ZOLAK

このアプリの特徴ですが、車種を選択して、さまざまなメーカーのアフターパーツ類を閲覧することができます。マッチするものを見つけて購入するだけでなく、ユーザーがカスタマイズした車の画像をソーシャルメディアで共有したり、友人からのフィードバックを集めることもできるので、顧客体験の向上だけでなく、EC事業者にとって強力なマーケティングツールとしても機能しています。

SephoraのAR beauty try-on tool
フランスの化粧品・香水専門店Sephoraのアプリは、口紅やアイシャドウなどを自分の顔に直接バーチャルで試すことができ、バーチャルガイドやインフルエンサーのアドバイスも用意されていて、自分にぴったりのテクスチャーや色などを選ぶことができます。

Sephoraはこのアプリを導入後、売上が35%増加し、買い物かごに入れる率が25%上昇したそうです。

販売者が得られるARの利点

ARは、没入感のあるインタラクティブで満足度の高いショッピング体験を提供します。顧客は、より自信を持って購入できるため、返品が減り、信頼関係が築かれ、リピーターも増えるでしょう。

また、3D製品ビジュアライゼーションとAR技術の導入により、高品質な商品画像撮影にかかるコストも削減できます。3Dモデルが一度作成されれば、再利用や更新が可能で、写真撮影を繰り返す必要がありません。さらに、SNSやモバイルアプリ、バーチャルショールームといったさまざまなデジタル環境に統合できるので、コンテンツ制作を効率化しつつ、一貫性と品質を維持することができます。

おわりに

AR市場は、世界全体で2024年までに130億ドルの収益に達すると予測されています。2024年から2029年までの予想年間成長率(CAGR)は6.77%で、市場規模は2029年までに180億ドルに達すると見込まれています。

現在、購入者はブランドに対して、よりパーソナライズされた体験を期待しているので、ARコマースを活用して商品の「魅せ方」を次のレベルに引き上げていく準備が必要な時期に迫ってきています。

競争が激化するECの世界で、ARと3Dビジュアライゼーションが時代をリードする強力なツールとなってきました。インタラクティブな情報に基づいたショッピング体験を提供することができた事業者が、売上を伸ばすだけでなく、長期的な顧客ロイヤリティを築くことができるのではないかと思っています。

参考文献:What Is Augmented Reality in Ecommerce? A Practical Overview(ZOLAK)

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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