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越境ECブログ

2024年版 まだまだ成長するタイのEC市場

今年も残り3か月となりましたね!越境ECの事業者様も年末商戦に向けて製造、在庫の確保、ECサイトの調整、販促・催事・セールなどの準備で忙しくされているのではないかと思います。

少し気が早い気もしますが、今年のこれまでのEC関連ニュースをふり返ると、よく話題に上がったアジアの国でダントツは中国。次によく目にしたアジアの国名は、インドネシア、シンガポール、ベトナム、タイ…といった、東南アジア諸国でした。

このところ、中国のEC市場が厳しい状況になっていることは以前お伝えしているとおりですが、東南アジアのEC市場が昨年から発展が目覚ましく、引き続き注目の地域の一つであることは間違いありません。今回はその中でもタイを取り上げてみます。

昨年ジェイグラブでは、タイから2名のインターンを招き、現地の生のEC事情をレポートしていただきました。(彼らのレポートは下の「関連記事」に紹介しておきますので、そちらもあわせてぜひご覧ください!)あれから間もなく1年がたつ今、タイのEC事情はどう変容しているのか、タイ向けソリューションにも力を入れているフランスのフィンテック企業のレポートを紹介します。

タイが次のEコマース成長市場になりうる理由

タイは世界的に認知された旅行・観光のハブであるだけでなく、東南アジアのEコマースの新星でもあります。タイは現在アジア地域で2位、世界では19位のEコマース市場となっており、7,000万人の人口と5,740億米ドルのGDPを擁するこの国は、急成長を遂げています。

この成長の大きな原動力となっているのは、若くテクノロジーに精通した人々でしょう。タイの消費者の大半は若く、デジタルへの関与度が高いため、モバイル・ショッピングのブームにつながっており、スマートフォンの普及率が上昇を続ける中、より多くのタイ人が、シームレスなオンラインショッピングを利用するためスマートフォンを使います。

規制の進展に関するスナップショット

タイ政府は「Thailand4.0」構想に多額の投資を行い、全国的なブロードバンドネットワークを強化しており、全国に安価な高速インターネットアクセスを提供するなど、デジタル・インフラ、電子決済システム、越境ECの分野で大きく前進しています。

タイ中央銀行とタイ銀行協会によって導入され、2017年からタイ国内のデジタル決済の普及が急ピッチで進めている国家電子決済「PromptPay」ですが、タイ国内でのキャッシュレス社会の促進をめざしているだけでなく、通貨規制を緩和して、国境を越えた決済や取引を容易にしています。こうした規制緩和や政策、インフラの整備により、世界のECビジネスにおける重要な決済プレーヤーとして位置づけているからこそ、急速な成長を後押ししていることは間違い事実です。

タイのECブームが成功を収めている

タイのEC市場は、2022年の234億米ドルから2025年には340億米ドルに拡大、年平均成長率(CAGR)は10.2%と、今後も大きな成長が見込まれています。2023年の4,120万ユーザーから、2027年には4,580万ユーザーになると予想されており、タイのEC利用者の普及率の高さを浮き彫りにしています。

タイのインターネットの普及率についても、2026年までには84%に達すると予測されており、スマートフォンの所有率もすでに同レベルに達していますので、タイの消費者はオンラインでの購買習慣も多様となり、消費財から旅行サービスまで、あらゆるものを購入していますから、大変活気のある市場となっています。

タイのインターン2名も口を揃えてタイの学生や社会人もSNSは動画系を中心に複数プラットフォームを利用していて常にオンラインとのこと。TikTokのようなショート動画プラットフォームでモバイルやソーシャルコマースのようなトレンドを受け入れている若い人口が増えており、特に、EC購入者の62%が17歳から36歳と言われていますので、若者層は重要なEC発展の役割を果たしています。

またShopee、Lazada、JibなどのECモールプラットフォームは、高度な自社のロジスティクスと配送システムを導入しています。日本からの越境ECでも、お客様に販売者から直送はできず、各社の物流プラットフォームを利用しないと販売できないトレンドです。早く、安く、安全に商品を届けるために、各社が日々改善とアップデートを繰り返しているような状況ですが、この手法がタイでは受け入れられているのも事実として知っておく必要があるでしょう。

またタイでは国内ECだけでなく、越境ECも盛んになってきており、越境ECはタイEC市場の30%を占めています。タイのオンラインショッピング利用者の半数近くが海外から越境EC購入していて、中国、米国、日本が上位を占めているのです。

タイのオンライン決済事情

タイの決済環境は、銀行振込が取引の31%を占め、次いでクレジット・デビッドカード、電子ウォレットがそれぞれ22%を占めています。代金引換は18%と依然として大きく、口座引き落とし、電子請求書、その他の方法は市場シェアが縮小しており、他国同様に今後もオンライン化の勢いは止まらないでしょう。

タイでよく利用される電子マネーは先ほどのPromptPayの他にTrueMoney Wallet、Line Payといった電子ウォレットが大きな支持を得ています。これらの決済方法は、利便性が高い上に、販売者にとっても取引手数料が安く利用しやすい環境になってきています。

Source:Why Thailand could be your next e-commerce growth market(WORLDLINE)

まとめ

記事ではまた、タイ向けの越境ECビジネスを行う上での課題も分析していましたので、一部紹介しておきます。

  1. 従来のクレジットカードよりも現地の電子ウォレット決済手段を好む消費者の強い嗜好に合わせましょう。様々な決済を統合するのは、技術的に複雑で時間がかかりますが、導入しなければ、現地での支払い方法を好む顧客を失うリスクがあります。
    (ジェイグラブ:ShopifyやECモールには決済アグリゲーションがありますのでひとまず安心ですが、本格的な自社ECサイトに様々な決済を導入するとなるとかなり大変ではあります…。)
  2. タイ中央銀行による規制緩和はあるものの、越境EC取引にタイバーツを使用する際の課題は残っています。規制要件に対応し、為替レートの管理、資金還流の処理、現地の銀行規制を遵守する必要があります。
    (ジェイグラブ:多くの国でCBDC中央銀行デジタル通貨の研究や試験が進められていますが、まだ完全に運用されている国は限られており、2024年時点ではパイロットプロジェクトが実施中です。本格導入されると爆発的な越境電子決済となりますので期待しています。)

越境EC、国内EC含め、自社ECで販売する際には多様な決済ニーズに対応する必要はありますが、現地の大手ECマーケットプレイスであるShopeeやLazadaでは複数の現地決済を導入しているので、これらのリスクを減らす手段としても有用です。いずれにしてもタイ市場に越境EC販売するには、自社EC+現地ECモールの併用は欠かせない状況です。

Writer 山田彰彦

山田 彰彦 代表取締役 越境ECコンサルタント eBay JAPAN創業メンバー、ヤフー株式会社コマース事業などを経て越境EC専門 ジェイグラブ株式会社を創業。越境EC歴24年。イーベイ・ジャパン公認コンサルタント、ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員も務める。

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