こんにちは。ジェイグラブの横川です。
DtoC(D2C、Direct to consumer)は、「メーカーが仲介業者を通すことや店舗販売をすることなく、自社のECサイトなどから直接顧客に販売するビジネスモデル」と定義づけられます。
普通に考えるとメーカーが問屋や小売店をすっ飛ばす、従来の流通経路を破壊するような行為に見えますので、メーカー以外の人にとっては歓迎したくない流れかもしれません。
しかし、実際は異なります。実はオンラインの世界は、どの立場位にいても「メーカーのように振る舞え」ます。なので、メーカーだけの特権とは決して言えないのです。
そんなD2Cですが、実は海外マーケットプレイスを利用することが成功の早道なんです。そうした情報を紹介いたします。
ECマーケットプレイスは、D2Cを成功に導く
小売業における消費者への直接販売の増加は、しばしばECマーケットプレイスにとっては競争上の脅威であり、D2C戦略を採用する大手小売業者の数が増えれば、eコマース市場におけるマーケットプレイスの地位は低下していくと考えられています。
しかし、Parcel MonitorとiPriceの最新の調査によると、多くのD2C小売業者がD2C戦略の重要な柱としてECマーケットプレイスをますます活用していることがわかりました。その理由は、マーケットプレイスを利用することで、より多くの消費者にアプローチすることができるからです。
従来の小売業から消費者への直接販売への移行
報告書によると、パンデミックによる店舗閉鎖で売上が38%減少したにもかかわらず、ナイキの売上は2020年8月にD2C事業のおかげで回復し、オンラインでの売上は昨年より82%増加しました。同様に、アンダーアーマーの2020年の卸売り売上高は25%減少しましたが、D2Cの売上高はEコマースの売上高が40%増加したことにより2%増加しました。
アディダスは2025年までにD2Cの売上を50%にすることを目標としており、パンデミック時のECでの需要の高さも相まって、D2Cへの流れは今後数年間で勢いを失うことはないと思われます。
東南アジアにおけるD2Cトレンドとマーケットプレイスの役割
iPriceのレポートでは、東南アジアで最も発展した都市のひとつであるシンガポールと、同地域で最大のEコマース市場であるインドネシアにおいて、上記の国際的なスポーツ小売業者3社のEコマース・トラフィック・データを調査しました。
iPriceの価格比較では、シンガポールとインドネシアにおいて、アンダーアーマーのGoogleインプレッション数がそれぞれ329%と56%増加していました。このような増加傾向は、シンガポールとインドネシアの両方で、アディダスとナイキにも同様に見られました。
消費者が自分で価格比較を行うようになったことで、東南アジアではマーケットプレイスの人気が高まっています。昨年、Shopee、Lazada、Tokopediaは、合計で5億人以上のウェブアクセスを記録しました。
D2Cブランドは、マーケットプレイスのトレンドに乗り、これらのプラットフォームと提携したり、マーケットプレイスでのプレゼンスを拡大するために公式のEコマースストアを立ち上げたりして対応しています。
東南アジアの代表的なマーケットプレイスであるShopeeとLazadaの両社は、小売業者と提携して、同地域の消費者が自社製品をより入手しやすくなるようにしています。昨年11月に発表されたLazadaとナイキの提携は、ナイキがこの地域の消費者に直接販売できるようにすることを目的としています。同様に、ShopeeはSulwahsoo社およびその親会社と提携し、この地域の消費者に直接販売できるようにしています。
ShopeeやLazadaなどのマーケットプレイスにおける公式ストアの誕生
LazadaやShopeeなどのマーケットプレイスには、LazMallやShopee Mallという専用スペースがあり、そこにはオフィシャルストアが集まっています。iPriceの調査によると、マーケットプレイス内のブランド商品に占める公式ストアの割合は、4%から20%以上となっています。
かつてマーケットプレイスは、国内や海外の小規模なビジネスが主流でした。しかし現在では、有名ブランドが大きな存在感を示しており、その様相は一変しています。iPriceの調査によると、今年4月の時点で、LazadaとShopee Singaporeだけでも1,000以上のアンダーアーマー公式ストアの商品が掲載されています。
このことは、マーケットプレイスの状況が刻々と変化していること、そして巨大なD2Cブランドの売上を促進する上でマーケットプレイスが果たす重要な役割を示しています。マーケットプレイスは、中小企業だけでなく、世界最大級の小売業者にも大きなチャンスを与え、D2C戦略の不可欠な要素として機能しています。
実際、マーケティングから物流サポートまで、マーケットプレイスが提供するエンドツーエンドの価値を考えれば、ブランドはマーケットプレイスを見過ごすことはできません。
「Lazadaはマーキーブランドとのパートナーシップにより、お客様にプレミアムでパーソナライズされたショッピング体験を提供しています。LazMallは、ビジネス戦略を補完する信頼できるプラットフォームを提供しています。例えば、大胆な補償と返品ポリシーにより、商品の信頼性と品揃えの良さを保証します。また、当社の包括的な物流エコシステムへのアクセスと組み合わせることで、ブランドパートナーは、コマース事業を持続的に拡大することができます」と、Lazada Groupの戦略担当のジェームズ・チャンは述べています。
※約中:それより、一部「ルー大柴語」になっている点をお詫びします
マーケットプレイスは特にシンガポールとインドネシアで急成長
2020年、ShopeeとLazadaは、2019年のパフォーマンスを上回る記録的な独身の日の販売数を経験しました。Shopeeでは1日で2億個の商品が販売され、Lazadaではイベント開始から100秒で1100万ドルの売上が殺到したように、マーケットプレイスはブランドが巨大な成長機会を獲得するための重要なプラットフォームとなっています。
※訳注:独身の日は中国発祥のセールスイベントですが、中華系住民の多い東南アジアでも非常に盛り上がるイベントです。
2021年第1四半期と2020年第1四半期を比較すると、シンガポールとインドネシアのEコマースマーケットプレイスの上位3社では、ウェブ訪問者数が65%増加しました。このペースでいけば、両国のトップEコマースマーケットプレイスは、昨年のウェブ訪問者数を上回る成長を遂げるかもしれません。
実際、この地域ではモバイルの普及率が高いため、かなりの数の消費者がモバイルアプリを使って購入していることを考えると、eコマースマーケットプレイスを利用するユーザー数の増加はこれをはるかに上回っています。
D2Cブランドは、これらの数百万人のユーザーを利用できるマーケットプレイスに惹かれています(特に独身の日などのメガセールイベント時)。
参考:How to Build an Effective Ecommerce Content Marketing Strategy
さいごに
日本では、一流企業、大企業、老舗企業ほど、「なぜ十分な知名度がある我々が、わざわざ◯◯なんてサイトに出店しないといけないのだ」という立場でマーケットプレイスを過小評価し、独自路線を貫こうとして見事に失敗こいてるところをよく見てきました。
海外では、大企業、一流企業、老舗企業だからという妙なプライドのためにみすみす売上を下げる方を選ぶなんてことはしません。
むしろ新天地に出るのだから、創業者の築いた土台にあぐらをかくのではなく、創業者が行ったことを繰り返す必要があると考え、できる策はなんでもやってきています。
この考えは重要です。たとえば、江戸時代の創業者が知名度を得るまで30年かかっていたとしても、いまはインターネットがあるんです。頑張れば3年で同じレベルに持っていけるでしょう。
創業者の足跡をたどる。この姿勢が何よりも重要です。